橋本裕の日記
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今年3月、経済産業省の傘下にある経済産業研究所が国民年金の国庫負担化を骨子とするレポート「年金制度をより持続可能にするための原理・原則」を発表した。
このレポートによれば、国庫負担にすれば、保険料を2割安くしても、現行並の給付額が維持できるという。なぜかといえば、これによって年金業務や簡素化され、大幅なコストダウンが可能になるからだという。
年金の業務を行う社会保険庁は2万9千人もの職員を抱えている。これだけの公務員がいれば人件費も厖大になる。研究所の試算によれば、年金業務の簡素化で少なくとも年間3千億円の経費が削減できるという。また、厚生労働省からの天下りや、不要な施設も処分できる。
現在、公的年金の積立金は、国民年金10兆円、厚生年金137兆円、共済年金50兆円と合計で197兆円(2001年3月末)もある。これだけの豊富な積立金を持っている国はどこにもない。
日本の厚生年金の積立金は、給付額の5.55年分もあるが、米国が1.55年分、英国が1.2ヶ月分、ドイツは1ヶ月分しかない。経済産業省の案にしたがって日本も年金を国庫負担にすれば、まずこの巨大な積立金がいらなくなる。そうすると、これにむらがる利権も消滅する。
だから厚生労働省は社会保険庁の解体をもたし、その利権を根こそぎ奪うこうした案には、いろいろと専門家らしいむつかしい理屈をつけて反対するわけだ。
その社会保険庁で、納付率の数字を上げるために、本人に無断で国民年金の保険料を免除し、納付を猶予していたことがあきらかになった。とくに悪質なのが大阪の社会保険事務所で、16の事務所が合計で3万7千人分もの不正手続きを行っていたのだという。同様の不正は、東京、京都、長崎、三重などでもつぎつぎと発覚しており、現在の時点で5万人を越えている。調査が進めばこの数字はさらに大きくなるだろう。
現在、年金の納付率は6割台に低迷している。社会保険庁はこれを8割に引き上げることを目標にしていた。しかし、この目標を達成するために、とんでもない不正が組織的に行われていたわけだ。組織防衛しかない頭にない役所は、すみやかに消滅するがよかろう。年金の国庫負担を、いまひとたび声を大にして主張したい。
(なお、「何でも研究室」に「年金問題を考える」を加えました) http://hasimotohp.hp.infoseek.co.jp/nenkin.htm
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