橋本裕の日記
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2006年03月24日(金) |
適正な労働環境の実現を |
トヨタをはじめとする輸出産業や銀行などの金融業を中心に、いま産業界は未曾有の利益をあげている。トヨタの2005年度の純利益は1兆3千億円、これについで利益を上げているのは、東京三菱UFJの1兆1700億円である。バブル最盛期を上回る利益である。
これまで銀行には47兆円の公的資金がつぎ込まれている。これにくわえて、ゼロ金利政策が続いてきた。日銀の試算によると、91年(金利6パーセント)の基準が2004年まで続いた場合にくらべ、預金者が失った金利収入は300兆円を超えるという。政府の低金利政策のお陰で銀行は助かった。その分預金者がわりを見たわけだ。
景気の回復にともない、銀行は貸し倒れ引当金が不要になったという。これによって7千億円以上の戻り益があった。銀行は賃金を上げたり、株の配当金を増やすらしいが、注入された公的資金をまだ返済していない。これをまずは国庫に返すべきだろう。
大企業の業績が回復したのは、中国を中心とするアジア圏の経済が好調なことが大きいが、企業が合理化を進めてきたことも大きい。この過程で多くの従業員が職を失い、転職を余儀なくされた。その多くは非正規社員になった。こうしたことから、家計の収入が毎年マイナスを記録した。
アメリカは国民所得の50パーセントを上位1パーセントの人が占めているが、かっては社会主義国なみの平等を実現していた日本でも、所得格差はどんどん拡がりつつある。この10年間で年収2000万円以上の上流層の人が30パーセントも増えて20万人を越えている
その一方で、年収200万円以下の下流層の人が24パーセントも増えて、ついに1000万人を越えた。生活保護を受けている人も100万人を超えた。非正規社員の割合を見ると、95年には5人に1人の割合だったのが、05年には3人に1人と10年間で急増している。とくにこの5年間の変化が大きい。
慶応大学教授の金子勝さんは、2/27日に放送されたNHK番組「ホットモーニング」のなかで、「格差があったほうがいいという意見があるが、現在だけではなく将来のことを考える必要がある。このままではいずれ社会のシステムがもたなくなる。早く止めないと大変なことになる」と警告していた。
好況に湧く大企業では、トヨタが組合の賃上げ要求に満額回答するなど、なかなか景気がよい。しかし、中小の企業は苦しいところが多い。大手の正規労働者は組合に守られていても、非正規労働者の多くは組合員ではなく、劣悪な労働環境で働くことを余儀なくされている。
組合はたんに自分たちの賃上げばかりを要求するのではなく、非正規労働者の待遇改善にも意を配るべきだろう。自分たちだけよければよいという了見では、組合活動はやがて尻すぼみになり、消滅するしかない。もっと広範な労働者の支持が得られるよう努力してほしい。
組合が生き残る道は「広範な労働者との連帯」しかない。そのためには、パート労働者への正規労働者並の賃金支給や労災をはじめとする社会保険制度の適用を求めるべきだ。賃上げばかりではなく、こうした社会的不平等を是正する方向で、適正な労働環境の実現を求めるべきだ。これからの労働組合はこうした社会のニーズに答えていかなければならない。
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