橋本裕の日記
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2006年03月11日(土) 海ゆかば

 私は軍隊が嫌い、戦争嫌いの人間だが、昔は戦争映画も見た。ある映画の中で、「海ゆかば」を聴いたとき、その心にしみる旋律に感動したものだ。今もこの曲は好きで、散歩しながらうたったりする。

 海ゆかば 水漬くかばね
 山ゆかば 草むすかばね
 大君の へにこそ死なめ
 かへりみはせじ

「海ゆかば」は、昭和12年10月、支那事変の拡大するなか、国民精神総動員運動の一貫として作られた。作曲者は東京音楽学校教授の信時潔である。昭和12年10月13日から、一週間、毎朝ラジオに「国民朝礼の時間」が設けられ、「君が代」とともに「海ゆかば」が流されたという。

 太平洋戦争開戦の昭和16年12月8日にも、「海ゆかば」は繰り返し演奏され、おおいに国民の戦意を高揚させた。大政翼賛会は「海ゆかば」を「君が代」に次ぐ 「国民の歌」に指定して、各種会合では必ず歌うようにと通達した。その時の朝日新聞にの見出しは、<「海ゆかば」 唱えよ一億 国民の歌を>だったという。

 こういう歴史を知りながら口ずさんでいると、なんとも悲しいい気持になってくる。そこで私は、「海ゆかば」の曲で、歌詞は万葉集の他の歌にかえてうたうことが多くなった。たとえば、大伴家持の抒情的な春の歌など「海ゆかば」のメロディによくあっている。

 春の野に かすみたなびき
 うらかなし この夕影に
 この夕影に 鶯なくも
 鶯なくも

 もののふの やそ乙女らが
 汲みまがう 寺井のうへの
 寺井のうへの かたがごの花
 かたかごの花

 うらうらと 照れる春日に
 雲雀あがり 心かなしも
 心かなしも 独りし思へば
 独りし思へば

 わが宿の いささむら竹
 吹く風の 音のかそけき
 音のかそけき この夕べかも
 この夕べかも

 このように繰り返しを入れれば、「海ゆかば」のメロディで唱うことができる。大伴家持の歌ばかりではなく、万葉集のすべての短歌はこの旋律に載せて唱うことができる。たとえば、次の歌もこの曲にあっている。

 信濃なる 千曲の川の
 さざれ石も 君し踏みてば
 君し踏みてば 玉と拾はむ
 玉と拾はむ

「海ゆかば」の旋律は、次のサイトで聴くことができる。この旋律にあわせて、万葉集の歌をうたってみてほしい。こころがゆたかに、そして美しく清められる。

 http://www.tetsusenkai.net/kokutai/umiyukaba.html


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