橋本裕の日記
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私は軍隊が嫌い、戦争嫌いの人間だが、昔は戦争映画も見た。ある映画の中で、「海ゆかば」を聴いたとき、その心にしみる旋律に感動したものだ。今もこの曲は好きで、散歩しながらうたったりする。
海ゆかば 水漬くかばね 山ゆかば 草むすかばね 大君の へにこそ死なめ かへりみはせじ
「海ゆかば」は、昭和12年10月、支那事変の拡大するなか、国民精神総動員運動の一貫として作られた。作曲者は東京音楽学校教授の信時潔である。昭和12年10月13日から、一週間、毎朝ラジオに「国民朝礼の時間」が設けられ、「君が代」とともに「海ゆかば」が流されたという。
太平洋戦争開戦の昭和16年12月8日にも、「海ゆかば」は繰り返し演奏され、おおいに国民の戦意を高揚させた。大政翼賛会は「海ゆかば」を「君が代」に次ぐ 「国民の歌」に指定して、各種会合では必ず歌うようにと通達した。その時の朝日新聞にの見出しは、<「海ゆかば」 唱えよ一億 国民の歌を>だったという。
こういう歴史を知りながら口ずさんでいると、なんとも悲しいい気持になってくる。そこで私は、「海ゆかば」の曲で、歌詞は万葉集の他の歌にかえてうたうことが多くなった。たとえば、大伴家持の抒情的な春の歌など「海ゆかば」のメロディによくあっている。
春の野に かすみたなびき うらかなし この夕影に この夕影に 鶯なくも 鶯なくも
もののふの やそ乙女らが 汲みまがう 寺井のうへの 寺井のうへの かたがごの花 かたかごの花
うらうらと 照れる春日に 雲雀あがり 心かなしも 心かなしも 独りし思へば 独りし思へば
わが宿の いささむら竹 吹く風の 音のかそけき 音のかそけき この夕べかも この夕べかも
このように繰り返しを入れれば、「海ゆかば」のメロディで唱うことができる。大伴家持の歌ばかりではなく、万葉集のすべての短歌はこの旋律に載せて唱うことができる。たとえば、次の歌もこの曲にあっている。
信濃なる 千曲の川の さざれ石も 君し踏みてば 君し踏みてば 玉と拾はむ 玉と拾はむ
「海ゆかば」の旋律は、次のサイトで聴くことができる。この旋律にあわせて、万葉集の歌をうたってみてほしい。こころがゆたかに、そして美しく清められる。
http://www.tetsusenkai.net/kokutai/umiyukaba.html
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