橋本裕の日記
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2006年03月03日(金) |
男の創られかた(1) |
旧約聖書によると、神は天地創造の6日目に、自らの手に一片の土(アマダ)を取り、これを錬って形を作り、息を吹き込んだ。こうして生まれたのがアダムだという。
アダムは多くの植物や動物を見つけて名前を付けた。しかし、自分の同じ仲間は存在しなかった。アダムには語り合える仲間がいなかった。その様子をみた神は、アダムを憐れんで、彼が寝ている間に、イブを創った。これで地上に一組の男女が存在したわけだ。
ところで、神はどのようにしてイブを創ったのか。アダムと同様に土からこしらえたのだろうか。これならアダムとイブは対等な存在である。ところがそうではなかった。神はアダムが眠っているあいだに肋骨を一本抜き取り、そこからイブを創ったのだという。
つまりイブはアダムの体の一部なわけだ。アダムは自分の一部であったイブに引かれ、これを一体化しようとする。そして、イブもまた本体であるアダムに回帰しようとする。これが男女がお互いに引かれあう原因だという。
<ついにこれこそ私の骨の骨、私の肉の肉、男(イシュ)から取ったものだから、これを女(イシャー)と名付けよう>(創世記第二章)
お話としては面白い。しかしやはりこれはお話でしかない。それに女が男のあばら骨から生まれたというのは、男尊女卑の匂いがしないでもない。旧約聖書を貫いている精神は熾烈な「男性原理」である。この原理が一神教を生んだわけだ。女を男の派生物としたのもこの男性原理の精神だろう。
もちろんこうした神話は、現代の生物学によって完全に否定されている。生物学によれば、私たち哺乳類の性別を決めるのはXとYという二種類の性染色体である。哺乳類のメスは細胞の中にX染色体を2本持ち、オスはXとYを持っている。
X染色体とY染色体はもともと常染色体で、同等だった。とことがY染色体はオスになる起動遺伝子を持つことで、Xとは別の存在になった。これが起こったのは3億年ほどまえのことらしい。
そしてここからY染色体の劣化がはじまったことは前に書いたとおりである。人間のオスが持っているY染色体はほとんど遺伝子を持たず、いまや廃墟に近い。このままでは人類の未来は暗いわけだ。
それはともかく、それではどうやってY染色体から男が創られるのか。これについては、明日の日記でくわしく書いてみよう。結論だけ言うと、現実は聖書と反対である。じつは男から女が生まれるのではなく、女になるべき存在にY染色体上の性遺伝子が働いて、女が男に変化するようになっている。
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