橋本裕の日記
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2003年07月19日(土) 暗き海色の花瓶

 俵万智さんは私と同郷の福井県の生まれだ。そのせいもあって、彼女の短歌には親しみをもっている。たとえば、「チョコレート革命」の中のこんな歌。

  水仙をふるさとの花と思うとき暗き海色の花瓶を選ぶ

 水仙は福井県の花。そして私はこの花が大好き。この短歌もとても気に入っている。越前海岸の断崖で、寒い季節風のなかに咲いていた水仙がしのばれる。

 越前海岸の越廼村には、こんな水仙伝説が残っている。二人の兄弟に言い寄られ、二人の仲が険悪になるのを恐れた娘が断崖から厳寒の日本海に身を投げた。その娘の姿が水仙に変身して海岸に打ち上げられたという。

 この伝説の故に、私は水仙を見ると、ふるさとの可憐な少女を思い浮かべる。逆境の中でも明るさを失わない、野の香りのする凛とした少女。その姿はただ可憐なだけではなく、楚々として美しい。

 この暑いとき、私は空想の中で「暗き海色の花瓶」に水仙を活けてみる。そうすると、季節はずれの水仙の花と、北国の海の群青が広がって、心の中が透明になり、涼しくなる。水仙の歌は納涼によい。私もいくつか詠んでみた。

 ふるさとの冬はさびしく海は荒れされどなつかし雪中花あり

 水仙は水辺に咲いて人誘うこの美しきもの何処より来し

 身を投げし少女伝説ふるさとの海辺に楚々とかおる水仙

 ふるさとの青き海ゆえ水仙のすがた美し北風のなか

 水仙のかおりただようまぼろしの清き水辺で今日も君待つ


橋本裕 |MAILHomePage

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