橋本裕の日記
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13.忘年会
夏休みが過ぎ、秋になり、金沢で四度目の冬を迎えた。 大晦日の夜、新聞配達が終わって、恒例の忘年会だった。私の他に、専従のDさんとNさんが招待されていた。芳子も一週間前に東京から帰省していた。
芳子が席を外したとき、専従のNさんが、 「橋本さん、芳子ちゃんと結婚したらどうや」 いきなり声をかけてきた。 「何を言っているの、橋本さんは大学を卒業して一流会社に就職するのよ」 奥さんがとりなした。
「会社に入っても会社の歯車になるだけや。ここの大将になれば一国一城のあるじやないかい」 「そうだそうだ、一国一城の主だ」 専従のDさんも相づちを打った。私はふと感傷的な気分になった。芳子と結婚してこのままこの専売所に腰を落ち着けてもよいような気がした。
私はその夜、皆に勧められるままビールを飲んだ。そして、十時過ぎに専売所を出ると、芳子や奥さんの止めるのもきかずに、酔っぱらったまま自転車に飛び乗り、雪の舞う夜道を寺に帰った。
正月も福井に帰らなかった。 そして、また学年末試験の季節がやってきた。去年以上に準備不足の私は、ふたたび主要教科をのきなみ落した。
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