橋本裕の日記
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2003年05月30日(金) あかね雲

9.新聞配達

 大学の帰り道に中日新聞の専売所があり、「配達員募集」の張り紙が出ていた。赤旗を配達していても一銭にもならない。営業紙の配達で得られる収入に興味が湧いた。話を聞くと、一部につき百円出すと言われた。朝夕刊あわせて二百部配れば月に二万になる。集金すればさらに手当がでるという。貯金ができそうだった。

 私は専売所を再び訪れ、アルバイトを申し出た。人手不足のおり私は歓迎された。配達用に自転車が貸してもらえるとのことで、私はその自転車に乗って帰って来た。

 新聞配達は単調な作業だったが、集金は思った以上に面倒だった。夕刊を配りながら一通り集めて歩くわけだが、商業地である武蔵ガ辻や近江町市場が私の区域に含まれていて、神経に障ることが度々あった。

 新聞配達のついでに新聞代を請求すると、
「こんな時間に来る奴があるか。出直してこい」
 と怒鳴られた。なかには小銭を床に落として拾わせようとした。長期滞納している家で二ヶ月分ずつ払って下さいと言うと、勝手に新聞を入れて置いて金を請求する奴があるかと叱られた。

 集金帳を渡されると、重苦しい気分になった。その様子を見て、店の奥さんが励ましてくれた。
「男は外に出たら七人の敵がいるというじゃないの。頑張って下さいね。おいしい夕食をご馳走しますからね」
 私はときどき奥さんの手作りの夕食をいただくことになった。

 一家には主人と奥さんと年寄りのおばあさんの他に、東京の大学に行っている一人娘がいた。夏休みには彼女が帰ってくるので、私も休みが取れそうだった。


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