橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2003年05月13日(火) 日本を近代化した男

 戦国武将の中で、私が一番好きなのは織田信長だ。私は彼こそ日本が生んだもっともスケールの大きな人物ではないかと考えている。当時は一向一揆が全盛であり、他に様々な宗派があって、民衆や武士の支持を受け、彼らの心を支配しつつあった。実のところ信長の最大の敵は宗教勢力だった。これを「天下布武」の理想に燃えた信長が粉砕した。

 彼の武力による支配がなかったら、日本はおかしな宗教国家になっていただろう。宗教の支配をうち破ることができたのは信長がいかなる宗教にも支配されない無神論者だったからだ。こんな自由な人は世界史的にも珍しい。前代未聞といってもよい。

 彼の「天下布武」のおかげで、日本はワケの分からぬ宗教国家になることを免れた。そして宗教戦争も経験せずに、平和に自由に暮らすことができた。信長がいなければ日本は恐るべき宗教国家になっていただろう。いまのイスラムのような世界を想像すればよい。

 信長の最大の功績は、宗教を政治から切り離したことである。政教分離を断行して、日本を本当に近代化したのは彼の最大の功績だった。そしてこれは世界史的に見てもほんとうにスゴイことだったのである。

 しかし、私は信長が本能寺で明智光秀に打たれたのも「天の配剤」だと考える。なぜなら、もし信長が天下を取っていたら、彼はまれにみる強力な独裁者として君臨していたにちがいないからだ。彼の「天下布武」の夢も日本という小さな島国に収まるものではなかった。

 おそらく朝鮮半島、中国に進出し、場合によってはインドやイラン、ローマまで侵攻して行ったに違いない。つまりアレクサンダーやジンギスカンに勝るとも劣らない大帝国を築いていた可能性がある。彼の夢はこの広大な世界帝国の皇帝になることであったとみてよい。

 日本に来た宣教師が、信長は地球が丸いということを認識した最初の日本人ではないかと書いていたが、信長ならそのくらいのことはやるだろう。当時日本の火縄銃の生産能力は世界最大であり、日本の保有する武力勢力はおそらく世界最強だったと考えられるからだ。経済的生産力の面でもヨーロッパやアジアのすべての国を凌駕していた。つまり日本の国力が一番充実していた時代だった。

 信長の夢を秀吉が引き継ぐが、やはり器が違う。それに秀吉は信長の後継者になるために精力の大半を使わなければならなかった。信長が光秀に打たれたことで、世界制覇という信長の野望が費えたわけだが、これは日本にとっても世界にとっても幸いなことだといわなければならない。

 信長が打たれ、秀吉が死んで、最後に生き残った家康が日本の国を治めることになった。そして彼は宗教を馴致し、これを政治の支配下に置くことで日本に未曾有の平和な時代を実現した。こうして日本の宗教は開祖達の理想を忘れ、堕落した葬式仏教として余命を保つことになったわけだが、これもまた「天の配剤」だと言えないこともない。


橋本裕 |MAILHomePage

My追加