橋本裕の日記
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作家の曽野絢子さんが、イラクのフセイン宮殿を文化財として保護するように訴えていた。宮殿や城は権力者がその力を誇示するために贅を尽くして豪華に作られている。そしてその栄華の跡は、時代がたつとともに輝きを増し、貴重な観光資源になる。経済的価値は大きい。
エジプトのピラミッドやベルサイユ宮殿、イギリスやドイツや日本の数々の城や名園もそうだ。中国の紫禁城、ロシアのクレムリン宮殿、日光の東照宮など、私はテレビや写真でしか知らないが、その壮麗さは想像がつく。すでに跡形はないが、アレキサンダー大王が燃やしたペルセポリスの宮殿も絶大な権力を誇った専制君主の栄華の跡である。
歴史に残る壮麗な宮殿や墳墓、庭園の多くは、強力な王権や特権的な貴族・商人の豪奢な生活から生み出された。しかし、嬉しい例外がないわけではない。たとえばギリシャのパルテノン神殿や劇場は公共施設であり、市民の共有の財産だった。ローマのさまざまな建造物もそうである。それらは市民のための公共財であって、権力者や富豪の専有物ではなかった。
なかでも私はギリシャの神殿が好きだ。これも写真や映像で見ただけだが、いかにも簡素で神聖な感じがしてすがすがしい。私がギリシャを愛するのは、彼らがこうした公共の施設の建設をとおして彼らの理想の美を完成させたことだ。
しかし彼らの想像力は目に見える世界を越えていた。彼らは精神世界に、壮麗な殿堂を築き上げた。その典型が学問や芸術であり、民主主義という新しい政治制度である。アクロポリスの丘に立つパルテノン神殿も美しいが、もっと偉大で美しい精神的建造物を人間はだれしも各々の内面に作り上げることができる、そのことを私たちは彼らから学ぶことができる。
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