橋本裕の日記
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2003年04月28日(月) あかね雲

1.ごまめの歯ぎしり

 私が福井の高校から金沢大学の物理学科に進学した年は、七十年安保の前の年で、東大の安田講堂占拠事件があったりして、世の中が騒然としていた。私はすぐにこの騒動に巻き込まれ、共産党の下部組織の民主青年同盟という組織にはいった。

 高校生の私は河合栄治郎の「学生に与う」を読んで、「己の人格を陶冶すること」に人生や学問の価値を置いていた。しかしこうした考え方は社会主義の洗礼を受けた私には、いささかもの足らなく感じられた。

大学に入って最初の夏休みに福井に帰省したとき、私は父の崇拝する先祖崇拝の宗教を批判した。そして社会主義の優れたところを述べた。しかし、父は聞く耳を持たなかった。

「そんなに日本が嫌いなら、ソ連でも中国へでも行ってしまえ」
「日本が嫌いじゃないさ。むしろ好きだからこそ、戦争のない平和で豊かな日本にしたいからこそ、今の体制を変えなければならないと考えているんだ。そしてそのために努力するのが我々市民の義務だと思うんだ」
「ごまめの歯ぎしりだな。世の中はお前の考えている程甘くはないさ」

 父の言葉に私は失望した。そして、こんな風だから、日本の労働者階級は救われないのだと、暗澹とした気分になった。

(「結婚まで」は一休みします。その穴埋めに、「あかね雲」をしばらく連載します。私の大学時代に取材した自伝小説です)


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