橋本裕の日記
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2003年04月10日(木) 嘘の上に築かれた戦争

 イラク戦争もいよいよ大詰めになった。アメリカの圧倒的軍事力によって、さしものフセイン政権も今崩壊の瀬戸際に追いつめられている。アメリカはこれによって、イラクをフセイン大統領の独裁から解放し、「民主化」に向けて一歩を踏み出すことが出来たと胸を張るかもしれないが、そのために支払われた犠牲はたいへんなものになった。

 そもそもこの戦争は、フセイン大統領が国連の視察を拒み、「大量破壊兵器」を隠匿しているということから始まった。それがいつの間にか「イラクの民主化」などという抽象的なものにすりかわっててしまったが、それはどうしてだろう。

 おそらく、「大量破壊兵器」が見つからないことをアメリカの戦争指導者たちがうすうす知っていたからではないだろうか。もしそうだとしたら、この戦争はアメリカとイギリスの現政権によって、意図的に演出され、ねつ造された戦争だということになる。

 そこで、この戦争が「演出」された経過を冷静に振り返ってみよう。イギリス政府が、「イラクが大量破壊兵器を持っている」という報告書を発表したのが、昨年9月24日だった。その中に「イラクは核兵器を開発するために、1999年から2001年にかけて、イラクがアフリカのある国から500トンの酸化ウランを買う交渉を進めていたことを示す関係文書が見つかった」と書いてあった。
 
 この報告書が出た2日後の9月26日、アメリカ上院の外交委員会で、パウエル国務長官も、イラクのウラン購入疑惑について同様の発言を行った。これによって、議会内でイラク侵攻に反対していた勢力は沈黙を余儀なくされた。そして米議会の上下院は、必要なときにブッシュ大統領にイラク侵攻することを認める決議を通過させた。

 12月19日には、米国務省は「イラクがウランを買ったのはアフリカのニジェールからだった」と具体的に発表した。そして今年1月28日、大統領は「年頭教書」でこれに触れて、イラクを悪の枢軸だと非難した。この後、911の後遺症からテロの影におびえるアメリカの世論は瞬く間に大きく戦争へと傾き、ブッシュ大統領は「大量破壊兵器」からアメリカを守るという名目で大軍をイラク周辺へと送り出し、戦争へと後戻りが出来ない道に踏み出した。

 ところが、今年3月7日になって、この文書を鑑定した国際機関IAEAが、ニジェールからイラクがウランを買ったという証拠だとされたイラク・ニジェール間の外交文書にはニジェールの外務大臣の名前が誤記されたりしていて、あきらかに偽造されたものだとと指摘した。雑誌「ニューヨーカー」の記事によると、どうやらこの文書を偽造した犯人はイギリスの諜報機関らしい。

 アメリカのブッシュ政権はこれが偽造されたものであること知りながら、戦争遂行のために利用したと考えられる。事実、国務省内の諜報担当者からは、偽造ではないかと疑う声が出たが、政府内で無視されてしまったという。

 こうして、嘘の情報によって、アメリカは世論を戦争へと誘導した。そして戦争という既成事実を作り上げた後、もとになった情報の虚偽が明らかになっても、これにほおかむりして、今度は「民主化」などというあたりさわりのない理屈を主役に押し立てて戦術転換をはかった。このように戦争は演出されたわけだ。

 こうしたことは過去の戦争でも多く行われた。旧日本軍の大陸侵略も、関東軍による謀略から始まっている。薪に火を点けるには種火が必要である。同様に国民を戦争に駆り立てるには何かのきっかけになる事件が必要なのだが、これが戦争を望む軍部や謀略機関のねつ造であることが多い。そして、一旦戦争がはじまってしまえば、この事件はさりげなく捨てられてしまう。

 こうしたことを考えるにつけても、この戦争がアメリカの主張するような「正義の戦争」だとは、私にはとても考えられない。政治学者の丸山眞男は「戦争は一人、せいぜい少数の人間がボタン一つ押すことで一瞬にして起せる。平和は無数の人間の辛抱強い努力なしには建設できない。このことにこそ、平和の道徳的優越性がある」と述べている。

 アメリカの一国覇権主義というマキャベリズムが国際社会を蹂躙しつつある。私たちはこうした困難な状況の中にあっても、平和を創るための辛抱強い努力を放棄してはならないだろう。

(参考サイト) http://tanakanews.com/d0408mi6.htm
         http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml


橋本裕 |MAILHomePage

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