橋本裕の日記
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2003年03月12日(水) メディア王の野望

 いつか読みたいと思っているのが、ジェフリー・アーチャーのベストセラー小説「メディア買収の野望」(新潮文庫上、下)である。これは世界のメディアを牛耳る二人のライバル、ルパート・マードックとハロルド・マクスウェルの覇権争奪戦の実話を小説にしたものだ。

 二人の戦いはぎりぎりのところでマードックが勝つ。破れたマクスウエルは破産し、1995年に謎の死を遂げた。その後、マードックは名実ともに世界のメディア王として君臨している。そしてその力はいまや、アメリカやイギリスといった大国の政権の行方を左右するほどになっている。

 マードックは「サン」といった大衆紙から「タイムズ」といった高級紙まで次々と買収し傘下におさめた。さらに彼は「ニューヨーク・ポスト」「ウィークリー・スタンダード」など約80種類の新聞と11種類の雑誌を所有している。アメリカの出版社ハーパー&ローを買収し、イギリスの出版社ウィリアム・コリンズと合併してできたハーパー・コリンズは、世界最大の出版社である。マードックの出版物を読んでいる人たちは世界中にいて、数千万から数億に上るという

 一昔前までは、アメリカは3大ネットワーク(ABC・NBC・CBS)の体制だったが、マードックの傘下にあるフォックステレビはセックスとバイオレンスとスキャンダルを売り物にして、瞬く間にこの体制を崩壊させた。フォックステレビは現在アメリカでナンバー2の視聴率を誇るネットワークになっている。

 マードックは、国際的に多くのテレビ会社を所有している。香港に本社がある衛星放送のスターTVは、アジアを中心とする53カ国で2億2000万人に利用されている。また、イギリスのBSkyB、ドイツのVOX、オーストラリアのFOXTELなどをはじめ、インド、日本でもテレビ会社を所有している。マードックは、テレビを通じて世界の人口の75%に影響を与えていると豪語している。

 こうした巨大な影響力を持っているマードックは、ブッシュやブレアに近いと言われている。実のところ、この二つの政権の立て役者の一人がマードックだった。たとえば、1992年、マードックは、クリントンを当選させないために、配下のメディアを総動員してクリントンのスキャンダルを流した。その後、ホワイトウォーター、モニカ・ルウィンスキーなどのスキャンダルを流し続け、クリントン率いる民主党のイメージ低下をはかった。そしてクリントン後のブッシュ政権への地ならしをした。

 マードックはイギリスの政権にも関与している。1992年の総選挙で労働党は世論調査では保守党に圧倒的差をつけつつも敗北した。その背景には、サッチャーに肩入れしていたマードックが労働党の高い支持率を覆すべく、配下の新聞各紙を総動員して同党を叩いていたからだ。

 しかし、保守党のメージャー首相が、「オーストラリア生まれの外国人にこの国の政治を左右されるわけにはいかない」とマードックから距離を起き始めると、一転してマードックはメージャーを叩き始める。そして労働党のブレアブームを演出しはじめた。女性ヌードを一面に載せる大衆紙「サン」がいまもブレア政権を持ち上げ続けるのはこうした因縁があるからだ。ブレア首相も大衆紙「サン」に他紙を差し置いて年頭の挨拶を掲載している。

 こうしてみると、アメリカとイギリスのイラク攻撃を前にして、ルーパート・マードック傘下のメディアがこぞって熱烈に英米連邦の戦争政策を支持し、イラクのフセイン大統領を口汚く攻撃し続けている理由もわかる。マードックはシャロン政権の立て役者の一人である。彼は1980年代から当時国防大臣だったシャロンと秘密会議を持っていた。そして1997年にはユダヤ人アピール連合の「今年の人道主義者賞」を受賞している。

(参考サイト) http://www.idaten.to/meikyu/a063.html
         http://www.mskj.or.jp/getsurei/hira9711.html

<今日の一句> さざなみの 寄せるがごとし 春の夢  裕


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