橋本裕の日記
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2003年02月20日(木) 民主主義を装った帝国主義

 ダグラス・ラミスさんはアメリカでは毎年何十万という人たちが、「殺人学校」に通って殺人の訓練を受け、すでに何百万人もの人々が、その殺人学校を卒業しているという。ここでいう殺人学校とは、アメリカの軍隊のことだ。

 ラミスさん自身、その卒業生のひとりである。彼は海兵隊員として沖縄にいたことがある。軍隊に入る前はカルフォルニア大学の学生だったが、朝鮮戦争に従軍した先輩の中には自分の机の上で戦場で拾った頭蓋骨を蝋燭立てにして使っていた人がいて、その人は大学教授になったという。

 軍隊には人間の思想や人生観を変える力がある。それは強力な教育機関でもある。そしてそこで行われる教育ほど、自由と平等に価値をおく民主主義にとって脅威となるものはない。軍隊がいかに非民主的な組織であり、非人道的な「殺人組織」かつ「殺人学校」であるか、ラミスさんの著書「経済成長がなければ私たちは豊かになれないのか」から引用しよう。

<普通、人は人を殺せないものです。抵抗があって、なかなかできないし、やりたくない。敵だと言われても、実際に人間の体を狙って撃てない人が多いのです。軍隊ではその抵抗をなくす訓練をするのです。殺せない人間から、殺せる人間への訓練です>

<そういう教育を受けた兵隊が帰ってきて、教わったことをやり続ける可能性が高いことは予測できます。事実として、殺人犯のうち、ベトナム帰還兵がとても多い。オクラホマ・シティーで大きなテロ事件がありましたが、その犯人が湾岸戦争での爆薬専門家だった>

 コロラド州のリトルトンでは高校生が多くの高校生を殺した。この犯人の高校生は軍隊を崇拝していて、いつも軍服を着ていたという。それから訳の分からぬ連続殺人事件が多発している。ラミスさんはこれもアメリカ社会がベトナム戦争以来、ますます暴力的になってきた現れだという。

 アメリカ社会がいかに暴力的かということは、民衆の娯楽を見ればわかる。いたるところに射撃訓練所があり、だれでも簡単に銃を手にとって射撃を楽しむことが出来る。またハリウッドの映画には暴力や殺人シーンが氾濫している。本来ならば正視するに絶えないような不快なシーンを、わざわざお金を払って見に行くのはどうしてだろう。人間が壊れているからだ。

 アメリカは民主主義国家のように見えるが実体はそうではない。それは世界でもまれにみる強力な軍隊があり、「私の意志に従わなければあなたを殺します、というのが軍事行動の基本」だからだ。軍隊は何よりも秩序を重んじる組織だ。しかしその秩序はなんのためにあるのかといえば、暴力の行使のためにあるのである。また軍隊の秩序そのものも暴力によって維持されている。そういう特殊な組織の暴力によって守られている国家が民主的だとはいえない。

<軍事組織は基本的に、政治用語で言えば独裁です。司令官がいて、そして司令官の下に権力のヒエラルキーがあって、命令は上から下へいく。そして、暴力を使って忠誠を確認する>

<それだけではなく、軍隊組織のもう一つの特徴は、それぞれの兵隊たち、個人の日常生活の細かいところまでの徹底した管理です。朝から晩まで、24時間のスケジュールがある。そして自分の引き出しの中の整理の仕方とか、服の管理の仕方とか、すべて管理されている。それを破ったら処罰される。だから、これは全体主義組織です。思想から日常生活、朝から晩までのスケジュール、すべてがルールに従わなければならない。そして暴力によって管理されている>

<こうした軍事組織のモデルはたぶん古代ローマから伝わったものだと思います。ローマ帝国はひじょうに合理的な組織を完成して、そのために数十年間で地中海のまわりの国をすべて征服することができた。大帝国ができた理由は、その組織力にあります。それが古代ローマの秘密であって、以来、ヨーロッパの軍隊組織はいつもそれを真似してきたのです。完全管理の組織はものすごく強い組織になるのです>

<軍隊をなくさない限り、国家が本当の意味で民主主義であるとは、言いにくいのです。戦争になれば軍隊組織が強くなって一般社会に対する影響も強くなる。だから、戦争の可能性、そして軍隊組織の存在はいつも民主主義の思想と民主主義の精神の足を引っ張ることになるのです>

 アメリカは世界一強力な武器と軍隊を持っている。そしてこの半世紀の間に、世界で一番多くの戦争をして人を殺している。くわえて、世界で一番犯罪が多い国でもある。ラミスさんが言うように、戦争と犯罪にあけくれているアメリカを民主的な国だとは呼べない。アメリカは民主主義を装った全体主義帝国主義国家だといえば、おおよそ真実に近いのだろう。 

<今日の一句> うららかな 日差しの中に 山白し  裕


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