橋本裕の日記
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| 2002年11月30日(土) |
高額な授業料がもたらす教育疎外 |
今年は三年生の担任で、わが家の次女も大学受験とあって、大学の入試要項やパンフレットを眺める機会が多かった。そして瞠目させられたのは、その授業料の高額なことである。1998年の統計によると、日本の大学の授業料の平均は、国立が年約154万円、私立が約207万円だという。問題はこれほどの授業料に見合うだけの教育を大学で受けているかということだ。
答えははっきりしている。日本の学生はほとんど大学へ行かないし、講義にも出席しないからだ。そのかわりアルバイトに明け暮れている。これだけの授業料を払うのは容易なことではない。不況風の吹く昨今は、親のすねもだいぶん細くなってきている。大学生が学業よりもアルバイトに精を出すのも、勉強嫌いでは片づけられない経済的事情があるからだ。
山形県の酒田短大では、定員の96%を中国から留学生が占めていて、彼等は親に依存するわけにはいかず首都圏に出稼ぎに出ていたという。日本人の学生の場合でも、本質的に同じ構造が支配していることを押さえておくべきだろう。 どうして授業料が高いのか、大学の敷地に足を運んでみればわかる。捕虜収容所のような殺風景な公立高校の建物と比べて、私立大学の校舎のなんと絢爛豪華なことか。ロビーには絨毯まで敷いてあり、高級ホテルかリゾートの一部のようである。
大学はこのように外観を立派に飾るために巨額の投資をしている。それもこれも学生を集めるためである。とくに伝統のない大学ほどこの見てくれで勝負する。見得を張っているわけだが、その結果が高額の授業料になって学生にはねかえってくる。学生はアルバイトに精を出すしかなく、立派な施設も飾りものだということになる。これが日本の大学の現状だ。
授業料を国際比較してみると、ドイツの州立大学は入学金も授業料も無償、フランスの国立大学の年間修学納付金は日本円にして16000円にすぎない。アメリカの場合は、1998年のデータで州立大学が年平均約48.2万円、私立大学で約241.2万円となっている。
私立大学の授業料だけ比較すると日本より高額だが、アメリカの私立大学に通うのは一握りのエリートに過ぎない。アメリカにおいて年間授業料が240万円を超える大学に通っている私立大学の学生は全体の約4%ほどに過ぎず、75%の学生が年間授業料72万円以下の大学に通っている。
しかもアメリカは最も奨学金制度が充実した国だということだ。給付総額は1994年で約5兆6400億円に達し、日本の10倍強の規模となっている。受給者は全米で推計370万人にも上り、学生全体の約7割が給付を受けており、2000年度における日本の約70万人、受給率約8.9%をはるかに上回っている。
日本ではこうした寒々とした教育疎外が放置されている。日本の産業界は大学生のアルバイトで支えられているという。しかし、これではとてもまともな国の姿とはいえない。教育が未来に対するもっとも有効な投資であることを、私たちは肝に銘じるべきだろう。
<参考サイト> http://www.kochi-wu.ac.jp/~aoki/college-j.html http://www.suzukan.net/03report/_011212.html
<今日の一句> 寒き夜の 梅酒はうまし 夢枕 裕
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