橋本裕の日記
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2002年11月29日(金) 香林坊の女

 10年ほど前に、金沢に出張した。金沢市にある県立高校を学校訪問し、いろいろとカリキュラムのありかたなどを教えてもらった。主張をおえたあと、犀川河畔を散策し、シティホテルに宿を確保してから、盛り場に一人でくりだした。

 観光都市金沢は夜も賑わっていた。香林坊の寿司屋に入って、ビールを飲みながら,新鮮なネタのにぎり寿司に舌包みを打った。客は圧倒的に若い男女のカップルである。その中に、サラリーマン風の背広姿がちらほら混じっている。

 寿司屋を出て、街を徘徊していると、客引きの男に声をかけられた。
「だんなさん、遊んでいきませんか。若いきれいな娘とふたりきりで、食べたり飲んだり、上半身さわり放題で、5000円ぽっちですよ」
「ほんとうに5000円ぽっちかい」
「それはもう、まちがいありません」
 そこで私は冒険心も手伝って、その店を覗いてみることにした。

 その店は表通りからだいぶん奥まった、寂れた通りにあった。民家をほんの少し改造したような二階の畳敷きの和室に案内され、しばらくするとミニスカートの若い娘が、お盆にビールとつまみを載せて入ってきた。
「どうぞ」と言って、私のグラスにビールを注いだ。グラスが二つあるので、相手のグラスに私がビールを注いだ。

 ビールとつまみだけで5000円は高すぎる。上半身さわり放題だというのを思い出して、「こっへきて」と声をかけると、おとなしく私の隣りへきた。そこで肩を抱いて唇を吸い、胸にさわった。ブラジャーは着けていなかった。

 ミニスカートをめくってみると、そこにはちゃんと水色のショーツをはいていた。下半身にさわるのは御法度だが、見るだけならいいだろうと、しばらく膝頭から太もものかけてのふっくらした白い肌を眺めた。そして水色の下着の下の秘められた女の世界を想像した。

 私が確認したのはここまでである。その先は別料金で1万円必要だと聞いたからだ。30分ほど女性と二人でビールを飲んで、肩を抱き、オッパイにさわり、そしてスカートの中を覗いて5000円は少し高いのではないか。そう思って店を出たが、宿に帰って、そうでもないなという気がしてきた。

 実際、ほほえましい旅のエピソードとして、私の記憶の中に彼女の淋しい横顔がほのぼのと残っていた。もし、あと1万円払っていたら、どんな淫らな記憶が加わっていたことだろうか。ちょっと残念な気がするが、やはり腹八分目がいちばんいいのだろう。おかげでさわやかな旅の余韻が今も清々しく残っている。

<今日の一句> たそがれて 木枯らしつのる 窓の外  裕


橋本裕 |MAILHomePage

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