橋本裕の日記
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2002年11月25日(月) 結婚まで

27.夢のあと
 私は女を抱いていた。誰かは分からなかったが肌がなめらかで白かった。女が顔をあげたので、じっと見つめてみた。くびれた腰から上のゆたかな、ふっくらとした赤い唇の娘だった。昔新宿の劇場で見た若い踊り子の一人かも知れない。

 ミラーボールのキラキラと弾けるような光りが私たちの周囲で飛び跳ねていた。そして天井がまわりはじめた。女がかたちのよい胸を揺らしながら反り返り、裾の方に体をすべらせた。やがて、私のものがあたたかく唇の中に吸い込まれた。

 舞台が回るにつれて、観客席の男達の顔が次々と見えた。女性客の姿もあった。私はこんなところでどうして自分が見せ物になっているのかわからなかった。体を起こそうとしても、金縛りにあったように手足が動かない。それでも必死に女から離れようとした。

 顔を上げた女の唇が濡れていた。そこから真っ赤のものがしたたり落ちている。唇にかわって、女の手が伸び、やがて鈍い痛みを感じた。
「もういい、やめるんだ」
 ふたたび女を振り払おうとしたところで、目が覚めた。

 着衣のままベッドに半身を起こしたS子がいた。天井の蛍光灯が点り、私は自分の下半身が蒼白くむき出しにされているのに気付いた。そして彼女の手がそこに伸びていた。私は彼女の手を払いのけた。しかし、すぐにまた伸びてきた。あきらめて枕元の時計を見ると、12時を過ぎていた。

「帰らなかったの」
「ずっとこうしてあなた寝顔を見ていたわ」
「3時間もかい」
「見納めだと思って・・・・」

 S子の手の動きが続いていた。しかし、私の体に目立った変化が生じているとは感じられなかった。私は少し気の毒になって彼女を眺め、髪を撫でながら、
「元気がないんだ。痛いだけだ」
 彼女は手を離すと、私をじっと見つめた。思い詰めたような顔が淋しげに見えた。
 
 S子の手が離れてしばらくすると、私のそこがかえってあたたかく疼いてきた。そこから私の全身へと欲望のさざ波が広がり始めていた。回復期の病人のような、健康で野蛮な力が甦りつつあるようだった。私は彼女の脇の下に腕を伸ばし、彼女を引き寄せた。女の汗ばんだ体臭がいつになく濃く匂った。

<今日の一句> 浜木綿に 古人の恋を 偲びたり  裕


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