橋本裕の日記
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2002年11月09日(土) 内部告発者の悲劇

 広島県の専門学校に勤めるAさん(58)は、99年3月29日の午後、同僚職員と一緒に過去3年間の帳簿の改竄を命じられた。通産省は「教員1人あたりの生徒はおおむね10人を超えない」という通達を出していた。立入検査でこれに違反しているのがバレそうになったからだ。

 教員不足を隠すために、架空の勤務実績をでっちあげた。Aさん自身も別の系列校に勤務していたように書類の書き換えをした。こうした偽造の作業は5日間に及び、4月2日に終了した。

 その間、Aさんは眠れぬ夜が続いた。最終日、このことを妻に打ち明けると、「一度うまくいくと同じことを何度もするよ」と言われた。Aさんは60歳近くになって、こうした悪事に手を染めなければならないことが苦しかった。そこで、告発文を徹夜で書き上げ、実名入り、内容証明付きで通産省に送った。

「通商産業大臣様、私はある人からさとされ、真実を告発するようにすすめられました・・・・」

 大臣なら自分の気持ち分かってくれると思った。しかし、通産省からは何の連絡もなかった。不安が高まった。そして、7月、Aさんは学校から解雇を言い渡された。解雇理由は「学校の名誉、信用を著しく傷つけた」ということだった。Aさんは驚いた。

 告発したことが学校側にどうして分かったのか不思議だった。通産省が漏らさなければ、分かるはずがない。そこでAさんは解雇無効の確認を求め、広島地裁に提訴した。そして裁判の中で、通産省が4月19日、実名入りの告発文を学校側に見せていたことがあきらかになった。

「解雇無効」という裁判所も判決は今年の6月に確定し、Aさんは3年ぶりに職場に復帰した。Aさんはさっそく通産省と学校側に謝罪を求めた。しかし、中国経済産業局は実名入りの告発文を見せたことに対し、「やむをえない措置だった。法的、道義的にも責任はない」という立場を崩さず、学校側も、「法的義務はきちんとはたしている。謝罪をするだ予定はない」という回答だという。

 実名入りの告発文を、本人の了解もなく、そのまま提示するという役人の神経がわからない。告発者がどんな不利益をこうむることになるのか、まるで想像力が働かなかったのだろうか。これでは役所と学校との癒着を疑われても仕方がない。Aさんはあくまで経済産業省に謝罪を求めるつもりだという。

(参考) 11月8日付朝日新聞朝刊

<今日の一句> 時雨ふる 紅葉の空は やさしくて  裕 


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