橋本裕の日記
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2002年10月23日(水) ちゃらんぽらんな部員

 帰り際に、いつものように疲れた足取りでよろよろとテニスコートへ行くと、珍しく2年生のI君が来ている。コートで顔を見るのは、10日ぶりだろうか。テニス部は「3日間無断欠席したら退部させる」というルールがある。このルールに従えば、退部させなければならない。他の生徒もそれとなく、私の方をうかがっている。

「おい、I、こちらにおいで」
 テニスコートで練習をしていたI君は、ベンチの私の声にしぶしぶやってきた。
「どうして呼ばれたか、わかっているね」
「あっ、ごめん。修学旅行のおみやげ忘れた」
「そいつは問題だな。しかし、もっと重大な問題があるぞ」
「そうですかね」

「ずいぶん、無断で休んでいるじゃないか。3日間ルールを知っているね」
「知っています」
「だったら、退部しろ」
「えっ、いきなり、退部ですか」
「いやか」
「いや、それは、その……」

 事情を訊くと、足を負傷したという。手も突き指をして、今も痛いらしい。
「ずいぶん、おっちょこちょいだな」
「そうでです。しょっちゅう、自転車でもこけるし……」
「今に交通事故で死ぬぞ」
「僕もそう思います」

「お前はいつか、テニスは楽しみながらやるものだと言っていたな」
「はい。言いました」
「楽しむのはいいが、それだけじゃ困るんだ。これは学校の部活だからな。道楽でやりたいんなら、他でやってくれ。迷惑なんだよ」
「他でと言っても、相手がいないし………」

「それはお前の勝手だろう。そんなお前達の勝手のよい都合に、この俺がつきあっていられるか。馬鹿やろう」
「でも、休日は遊びたいし」
「遊びたいのは俺も同じだよ。おれが好きでやっていると思っているのか。顧問が毎日テニスコートに来ているのに、お前は何だ。無断で休んで、いいのか」
「それは、すこし、ヤバイと思いますね」

「やるならやるで、毎日出てこい。辞めるなら辞めろ。俺はどっちでもいいんだ。しっかり考えて、今週中に俺の所にイエスかノーを言いにこい。いいね」
「わかりました」
「ちゃんと考えるんだぞ。こんど無断で休んだら、もう完全に首だからな。彼女ともよく相談するんだな」
「えっ、何で、彼女ですか」
「いるんだろう。それで、向こうが楽しくなって来なくなったんだろう。それとも、アルバイトでも始めたのかな」
「いえ、彼女の方です」

 正直言って、3年生が引退してもまだ28名と、ただでさえ部員が多いわがテニス部だ。こんなちゃらんぽらんな部員は首にした方がいいのである。そのほうが、1年生への示しがつく。部の規律も守られる。

 しかし、まがりなりに、彼も部員として一年半続けてきて、試合にも出ていた。あと半年間、来年の4月の公式戦までがんばれば、3年間活動したという認定が出て、高校生活の勲章になる。彼自身のことを考えると、そう、無慈悲にもなれない。腹が立ったが、数日だけ、猶予を与えることにした。

<今日の一句> 歳ととも 秋の夕暮れ 淋しくて  裕


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