橋本裕の日記
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不況がいよいよ深刻になってきた。巷に失業者が増え、不況風がこれからますます吹き荒ぶのだろうか。こうした中で、私たち公務員の給与もかなりカットされそうである。住宅ローンを抱え、大学生を抱えているわが家の家計は、現在でも赤字なのだが、これからますますローン地獄に陥り、火の車になりそうである。
ところで、自殺率と失業率のグラフはほぼ同じかたちをしている。リストラが吹き荒れ、中高年の失業者が増えると、これからますます多くの自殺者を出すことになりそうだ。現在でも毎日100人近い人が自殺をしている。交通事故死の3倍にも相当する異常な数字だが、これがさらに増えていくのかと思うと、やりきれなくなる。
ヨーロッパやアメリカでも、ここ数年来、雇用リストラが進んだが、自殺者がそれに比例して増えてはいない。なぜ日本では、リストラに絡んで自殺も増えるのか。その理由は、日本では、リストラされた中高年のサラリーマンの再就職の道が事実上閉ざされているからだ。
こうして失業率の増大が、リストラ自殺を生むわけだが、実はリストラの被害は中高年にのみとどまるものではない。リストラを免れた社員もまた、労働強化の憂き目を味わうことになる。つまり、辞職して失業するのも地獄なら、残るのも地獄ということだ。
現に、残業時間数はこの数年間上昇カーブを描いていて、バブル時の人不足の水準に達している。失業と残業がセットになっているところが、日本の何ともかなしくて貧しい現実である。失業者に職を与え、現職者の仕事を軽減する法的処置(ワークシェアリング)が一向にはかどらないのが、私には残念でならない。これは政治の貧困としかいいようのない現実である。
こうしたなかで、10月16日(水)放送のNHK「クローズアップ現代」が「急増 30代の過労死・過労自殺」と題して、30代若手社員のなかに急増している過労死・過労自殺の問題を実例をあげて具体的に取りあげていた。
NHKはここ5年以内に過労死・過労自殺した人の遺族を対象にアンケート調査を実施したという。遺族67人の回答をもとに追跡取材した結果、浮き彫りになったのが、不況下で生き残りをかける企業が、中高年のリストラを進める中、残った働き盛りの社員に仕事が押し寄せ、かつてない長時間労働が課せられている現実である。
人員削減の穴を長時間サービス労働で埋めようとする企業や、厳しい価格競争を生き残るため、社員に過酷なノルマを課しつつ、その精神的異変に同僚も気づくゆとりがない。こうしたなかで、仕事による過労、ストレスから虚血性心臓病、うつ病から自殺など、死に至る状況が慢性的に生み出されているわけだ。NHKの番組を見ているうちに、私は何ともやりきれない気持になり、やがて怒りで体が震えてきた。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」(日本国憲法25条)
いくら立派な憲法があっても、それを守ろうという国民の意識と実践がなければただの空文である。国民が政治を軽視していると、いつかそのつけは国民にまわってくる。NHKの番組で、残された遺族が「過労死のことは知っていたが、まさか主人に限ってと思っていた」と涙ながらに語っていた。死んでいった人も、「まさか自分に限って」と思っていたのではないだろうか。
過労死・過労自殺に追い込まれる人の中には、ストレスをあまり意に介さず、一見丈夫そうなやり手の人が多いという。このような人は、自分の心やからだが苦しい状態なのに、それに気づかないで、結果的に病気になるまでがんばってしまう。心身症になりやすいだけでなく、過労死・過労自殺が多いのもこのタイプといわれている。一口で言えば、自信家ほどあぶないのである。心当たりのある人は用心した方がいいだろう。
<今日の一句> 過労死は かなしかりけり 柿を食ふ 裕
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