橋本裕の日記
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2002年10月11日(金) ゴールドラッシュの勝者

 ヨハン・アウグスト・ズーターについて検索中に、野口悠紀雄さんの「超整理日記」にであった。その中に「ゴールドラッシュの勝者はだれか?」という文章があった。興味深い内容だったので、私見をまじえながら紹介しよう。
 
<1848 年 1 月、カリフォルニアの開拓者ヨーハン・アウグスト・ズーターの農園を流れる川で、豆粒大の金(きん)が発見された。歴史に残るゴールド・ラッシュの始まりである。

 ズータはスイスの生まれで、10 年ほど前にカリフォルニアに来て農園を始めていた。彼の夢はここに農業帝国を築くことだったので、(信じられないことだが)金で利益を得ようとは思わなかった。そこで、発見を秘密のままに葬ろうとした>

 ズータはドイツ人らしく、勤労を重視する堅実な考え方の持ち主だったのだろう。もし現代に生きていたら、バブルなどに踊らされることなく、株や土地の取引で儲けることに反感をもつような保守的なタイプの人間ではなかったかと思う。自分の土地で金が出たり、石油が出たりすることは、農業と勤労に価値をおく彼にとって、むしろありがた迷惑なことなのかもしれない。

<しかし、ニュースはたちまちのうちに広がり、一攫千金を夢見る人びと(「フォーティナイナーズ)が全世界から集まってきた。なにしろ、アメリカの他の地域での賃金が 1 日 1 ドルであったのに対して、カリフルニアで金を採れば 1 日 25 ドル稼げたのである。

 しかし、フォーティナイナーズで財をなした人は、一人もいなかった。それどころか、彼らの大部分は、経済的に破滅したのである。それは、インフレが生じたからだ。当時のカリフォルニアは、住宅、食料、衣料など、生活に必要なものが何もないところだったから、生活必需品が高騰したのだ。たとえば、他の土地で 1 バレル(約 100 リットル) 4 ドルである小麦は、1 パイント(約 0.5 リットル) 1 ドルになった。つまり、約 50 倍になったわけだ。賃金が 25 倍になっても、実質賃金は約半分ということになる>

 金をめあてで、何万人という人々が押し寄せた。生活物資が不足し、ときにはグラス一杯の水が100ドルで売られたという。多少の金を手に入れても、これでは生活が出来ない。一攫千金の夢はこうしてはかなく消えて行った。

<ところで、カリフォルニアのゴールドラッシュで、すべての人が経済的に破綻したのかといえば、そうではない。大儲けした人もいた。最初の成功者は、サンフランシスコの商人サム・ブラナンである。ただし、彼は、金を採鉱したわけではない。

 ブラナンは、西海岸にあるすべてのシャベルと斧と金桶を買い占めたのである。その後で、サンフランシスコの通りを、「金だ。金だ。金が発見された!」と叫んで歩いた。20 セントで買った金桶を 15 ドルで売るといった具合で、わずか 9 週間のうちに、3 万 6000 ドルを手にした>

 こういう抜け目のない男は他にもいた。たとえばニューヨークで乾物(ドライフーズ)の商売をしていたリーバイ・ストラウスという男がそうだ。彼はさっそくカリフォルニアに移住して、金採掘者たち(フォーティナイナーズ)にデニムのパンツを売りつけて大儲けした。これが現在のブルージーンズであり、彼の興した会社が現在の「リーバイス」だという。

<ヘンリー・ウエルズとウイリアム・ファーゴは、送金・輸送・郵便のサービスを始めた。当時のカリフォルニアには、こうしたサービスの安全・確実な供給がなかったので、これはフォーティナイナーズがきわめて強く求めていたものだったのである。彼らの興した会社は、現在の「ウエルズ・ファーゴ」だ。

 彼らも、金の採掘をしたのではない。集まってきた金採集者が必要とするものを提供したのだ。しかも、他の人々が容易に模倣できないものを供給した。彼らの興した事業は、今日においても残っている。したがって、彼らこそが、ゴールドラッシュの真の勝者といえるだろう>

 ゴールドラッシュは、これら商才に長けた人たちにそれこそ一攫千金の機会を与えた。そして、なによりも大きな遺産は、サンフランシスコという今日に残る美しい都市であろう。しかし、この都市が生まれるにあたって、そこに数々の悲劇があったことはたしかだ。そして幸運が悲劇につながったという意味で、ヨハン・アウグスト・ズーターは、もっとも気の毒な犠牲者の一人だったと言えよう。

 野口悠紀雄さんはゴールドラッシュを今日のITブームに重ねている。ゴールドラッシュで金採掘者や土地所有者は結局破産した。どうように、今、IT関連の企業は不振に陥り、破綻に追い込まれているものが少なくない。この状態はどこかゴールドラッシュのときの状況に似ている。

<このことは、われわれに貴重な教訓を与える。つまり、IT で富を築く人が今後現れるとすれば、それは、IT の進展によって需要が増え、しかも、容易に模倣できないものの供給に成功する人だろうということだ。つまり、リーバイス=ウエルズ・ファーゴ型の勝者である。まず注意すべきは、真の勝者は、IT の利用そのものからは現れないだろうということだ>

 ITブームは私たちに何を残すのだろう。できることなら、世界中の人々を繋いでできる多重的で寛容な精神の共生空間、もしくは自由で平和な交流のできる共有の広場であればよい。そこから21世紀型の新しい文化が育ってほしいと思う。あえて言えば、IT文化には特定の経済的勝者はいらないのである。


ーーーーーー渚の王子様が調べて下さり、次の2点がわかったーーーーー

1.「サンフランシスコ」と「サクラメント」の誤認
サターが所有権を主張したのは、「サクラメント」地域の土地であり、「サンフランシスコ」ではありませんでした。

2.土地所有権の根拠
カリフォルニアは、サターが入植した1830年代後半においてメキシコ領でした。彼は、メキシコ政府のカリフォルニア知事のアルバラードから、メキシコ市民権と4800エイカーの土地を授与されているのです。その後カリフォルニアは米国の戦勝により、メキシコから米国に帰属が変わり、現在に至っているのですが、彼が土地の所有権を主張した根拠は、最初に入植した「優先権」ではなく、メキシコ時代の知事から所有権を授与されたという事実に基づいているようです。裁判所も、この権利を認めました。但し、一部の土地については無効審判が下ったようです。

(参考サイト) http://www.calgoldrush.com/part1/01suttertimeline.html

 ーーーーーーーーーーーありがとうございましたーーーーーーーーーーーー

<今日の一句> 秋晴れに 風の香りよ 金木犀  裕


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