橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
昨日は「教育の目標は何か」ということで書いてみた。「政治に参加できるようになること」というイギリス流のすぐれているところを力説したわけだが、今日は同じ流儀で、「人生の目標」について考えてみよう。これについては、実は私がかねてよりお手本にしたいと思っている国がある。
それはズバリ、「人生の目標は社会貢献にある」というオランダである。これについては以前の日記や、その後「何でも研究室」に載せた「オランダ入門」にくわしく書いた。ここではその要点を簡単に復唱しておこう。
オランダはNGOの活動が盛んなことで知られている。外国に災害が生じると真っ先に駆けつけるのがオランダのNGOだという。実際に国民の大半が何かのNGO活動に関係している。国際貢献を国是とし、危険性の高い紛争地域にも国連平和維持軍を派遣している。ボスニア紛争ではセルビア軍の侵攻を許したことで非難を浴び、内閣が倒れる騒ぎになったが、それもこれも国連の活動に積極的にかかわってきたゆえのことである。
ODAはGNP比0.79%で、第1位デンマーク、第2位ノールウェーに続き世界第3位である。GNP比0.35%である日本の2倍以上もある。人口、面積とも日本の九州ほどしかないが、金額ベースでも、米、日、仏、独、英に次ぎ世界第6位の援助大国だ。さらに注目すべきはことはその質の高さである。環境問題や貧困の撲滅、婦人の地位向上を重視し、ODAのかなりの部分が地元で活動するNGOを通じて実施されている。人道的見地から現地の実情に根ざした援助が主体で、日本のような国内企業に配慮した環境破壊・開発型のひも付きではない。
NGOは教育にも深くかかわり、オランダの小学校の教科書や副読本の多くは、こうしたNGOが提供しているという。社会貢献こそが人生の目標であり、そうした社会活動に参加することが、人生のほんとうの生き甲斐であることを、それこそ小さいときから学校や家庭で繰り返し学ぶわけである。オランダの教育制度は理念がはっきりしていて、しかも実践的である。
こうしたさまざまな社会活動に参加し、そうしたなかで人間的に成長することが、すなわち個人のほんとうの幸福であるという考えは、オランダ人の自然な常識にさえなっている。日本人にはほとんどこうした発想がないが、これもまた日本の社会性を軽視する教育制度のしからしめる結果だろう。
オランダの子供たちは大学入学試験の勝者になるために塾に通うこともなく、これという受験勉強もしないが、高等教育の水準ははるかに高く、ノーベル科学賞受賞者の数は日本の2倍以上もある。研究活動も又、最高の社会貢献と位置づけられているので、学者の士気も高く、国民の共感や援助も得られやすいのだろう。
長年オランダに住んでいる人の著作によれば、政治家の汚職は皆無で、ホームレスも一人も見かけないという。ワークシェアリングを採用し、ほぼ完全雇用を達しながら、しかも経済の国際競争力ランキングでは常にベスト5に入っている。(日本は27位)この活力の根本にあるのが、「人生の目標は社会貢献にある」というオランダ流人生哲学ではないかと思うのである。
<今日の一句> 団栗を ひとり拾へば 鳥の声 裕
|