橋本裕の日記
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2002年09月11日(水) 世界秩序崩壊への序章

 1年前の今日、アメリカはテロ攻撃をうけて、思いもかけない辛酸をあじわった。おりしも経済に翳りが見え始めていたときで、このテロが後押しする形で、その後株価は暴落し、一気に不況のなかに転落した。国際貿易センタービルの崩壊とともに、アメリカ経済のバブルが崩壊しはじめたのである。

 こうしたなかで、エンロンやワールドコムの不正経理や粉飾決算があきらかになり、これにかかわった巨大会計事務所が倒産するなど、アメリカの有力企業があいついで崩壊した。いずれも経営者たちはこうした不正行為によって総計数100億ドルもの利益を得ていたことがあきらかになっている。

 たとえばエンロンの経営者は会社の利益を膨らます大規模な粉飾決算をして株価をつり上げ、巨大なボーナスを手に入れていた。そして社員に自社株を買わせる一方で、自らは高値のうちに株を売り逃げして、創業者のレイ氏などは1億2300万ドルもの利益を得ていた。ブッシュ大統領は7月に行った演説のなかでこう述べた。

「アメリカのビジネス指導者の高潔さに対する信頼は、経営者の背信行為と権力の濫用によって地に落ちてしまった。・・・ビジネス社会に個人の責任に関する新たな倫理を導入する時がきた」

 しかし、ブッシュ大統領そのものにインサイダー取引の疑惑が浮上している。そしてチェイニー副大統領など政府高官の多くが産業界と癒着していたことなどが暴露さた。企業の機密情報を知る立場にあるのは経営者やこれに近い一部の特権階級である。粉飾決算で当座の株価を押し上げ、自分たちは売り逃げして巨万の富を手に入れる。その後、株価は暴落し、紙切れ同然となり、企業は倒産に追い込まれる。

 こうしたなかで、犠牲になるのは企業の従業員であり、一般の株主である。アメリカでは多くの人が株式で資産を運用している。従業員も自社株を多く持っている。株価が暴落することで、この半年間でアメリカ国民が失った資産の合計は、日本の1年間のGDP総額をも越えているという。経営者の不正が次々と明らかになると、株式市場の信頼が崩れ、これまでアメリカに集中していた資金が逃げ出してドルの価値も下がってきた。

 アフガン空爆によって、一気にあがったブッシュ大統領の支持率も、最近は低迷している。11月には中間選挙があり、次期大統領を確実にするためには、これに勝たなければならない。しかし、経済は低迷し、国民の不満は高まりつつある。このままでは選挙を乗り切ることができない。イラク攻撃はこうした国民の不満を外に向けさせるために必要なのだろう。これによって軍需産業が活性化すれば株安もおさまるかもしれない。11月の中間選挙を考えれば、10月には攻撃をはじめなければならない。

 アフガン空爆のときは、国民の92パーセントがこれに賛成する中で、議員達も与野党を問わず賛成に回った。反対したのはただ一人、バーバラ・リー議員だけだった。国民全体が熱狂する中で、ひとり反対の声をあげるのはなかなか勇気のいることである。

 今回もアメリカ国民の大半はイラク攻撃に賛成だそうである。さて、ブッシュは本当にイラクを攻撃するのだろうか。そのとき、連邦議会の議員達はどのような判断を下すのだろう。議員達の姿勢が気になるところである。

 ブッシュはイラク攻撃の必要な理由として、当初テロ組織アルカイダとの関係をあげていたが、結局「十分説得力のある証拠」が見つからなかった。そこでブッシュ大統領が12日に予定している国連総会での演説では、イラクが生物、化学、核の大量破壊兵器開発を進めている危険性を強調することになったという。しかしこれでは、「はじめに攻撃ありき」という印象をまぬがれがたい。

 イラク攻撃で、ブッシュ大統領の株は上がるだろう。アメリカ国民は勝利に酔い、景気も多少よくなるかも知れない。しかし、それはほんの一時的なことである。そのあと経済は奈落の底に沈み込み、深刻な悲劇がはじまるだろう。今ブッシュが行おうとしていることは、結局エンロンの経営者たちが行ったことと変わりがない。しかし戦争という不正な方法で株価をつり上げることだけはやってはならない。もしこれを許せば、世界秩序そのものが崩壊するだろう。

<今日の一句> よろこびと かなしみ深し 虫の声  裕


橋本裕 |MAILHomePage

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