橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2002年08月19日(月) 結婚まで

13.アパートの明かり
 名古屋駅前で時間つぶしのために映画を見て、地下街の食堂で夕食をすませた。西春の駅を降りたときは、8時を少し過ぎて暗かった。私は駅前の角の本屋で雑誌を一冊買って、それを片手に歩き出した。町の駅前通りは、その一軒の書店の他は、もうほとんどが店じまいをしていた。

 国道を渡った後、路地の角を曲がると、田圃の向こうにアパートが見えてきた。私は思わず二階の自分の部屋のある一角を眺めた。明かりが消えていた。S子がまだ私の部屋に居座っているのではないかという不安が遠のいた。

 私が恐れていることは、S子がおしかけてきて、私と同棲生活を始めることだった。そうしたとき、私は彼女を追い出そうとするだろうが、どれほど有効な手段があるのかわからなかった。あげくのはて、ずるずると同棲生活のぬかるみにはまっていきそうな不安があった。

 3階建てのアパートには、20人近くが住んでいた。そのほとんどは若い女性だったが、どうやら同棲しているらしいと思われるカップルもいくつかあった。アパートの窓明かりを眺めていうちに、私の頭の中には、そこで生活する人々のありさまがいろいろと浮かんできた。

 食事をして、テレビを見たり、読書をしたり、それから排泄をして、風呂に入って眠る。ときにはセックスもするだろう。自分の生活も、そこに住む一員として外から眺めてみると、さながら何物かにあやつられて行われる芝居のように思えた。それはなやら滑稽で哀しく、そして淋しかった。
 
<今日の一句> 風にのり 風にたわむれ アゲハ蝶  裕


橋本裕 |MAILHomePage

My追加