橋本裕の日記
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2002年05月29日(水) 「二次方程式の因数分解」(2)

 さて、昨日に続いて、数学の授業のデモンストレーションである。対象は数学が苦手だという社会人のおじさんたち。中学校で習う「因数分解」を教材にして、彼らに数学の面白さを少しでも分かってもらおうと、もうひと踏ん張りしてみよう。

私「さて、このトランプのカードの数字をあててください。この数字を2乗した値に、この数字を2倍した値を足して、さらに35を引くと、その合計の値は0になります。Dさん、どうですか」

D「急に難しくなりましたね。まったく見当がつきません」

私「そう言わずに、頑張ってみましょう。Dさん、黒板に式を書いてみて下さい」

D「わかりました。こんなもんでどうでしょうか」
 
    x<2>+2x−35=0 ・・・・・・・・・・(1)

私「正解です。それでは、この式を解いてみましょう。左辺を因数分解するのでしたね。それでは、Eさん、やってくれますか」

E「私は数学は本当に苦手なんです。その、因数なんとかいう奴が、とんとわかりません。何ですかね、その因数なんとかというのは・・・」

私「因数分解です。たとえば 6=2×3 と分解できるでしょう。ここで、2とか3のことを6の因数と呼びます。この因数の積にすることを因数分解というのです。これは数字の場合ですが、式もこのように因数分解ができます。
 たとえば、 (x−1)(x+2) は次のように展開できますよね。

 (x−1)(x+2)=x(x+2)−(x+2)=x<2>+x−2

したがって、

 x<2>+x−2=(x−1)(x+2)

と因数分解できることがわかります。

E「なるほど因数分解がどんなものかいくらかわかりました。でも、どうやって因数分解をしたらよいのかわかりません。展開の方はできそうですが・・・」

私「どうしたら与えられた式を因数分解できるか。そのことを次に考えてみましよう。そのために、まず与えられた式が次のように因数分解できたと仮定してみます。

  x<2>+2x−35=(x+□)(x+○) ・・・・・・(2)

 ここで、□、○に入る具体的な数字が見つかればいいわけですよね。それでは、さきほどから退屈そうにしているFさんに答えて貰いましょうか。□、○の数字を言って下さい」

F「−5と7です」

私「正解です。Fさんはどうして答えが分かりましたか」

F「昔、学校で習いましたからね。掛けて−35,足して2になればいいのでしょう」

私「その通りです。それでは、なぜそうするといいのか、説明はできますか」

F「説明はできません。ただ、そんなふうにすればいいと教えられたので、まあ、その通り覚えているわけです」

私「いわゆる公式として暗記したのですね。理屈はわからなくても、確かに問題は解けるし、点数はもらえますからね。でも、それでは数学の本当の面白さはわかりませんね。数学をほんとうに理解したことにもなりません。だれか、ちゃんと説明できる人はいませんか」

G「先ほど先生がやられたように、(2)式の右辺を展開すればいいのではないでしょうか。ちょっと、黒板を使わせて下さい。

 (x+□)(x+○)=z<2>+(□+○)x+□○

一方 (2)式から (x+□)(x+○)=z<2>+2x−35 なので、

 □○=−35、  □+○=2 ・・・・・・(3)    
 
 これを解いて、□=−5、○=7が得られます。つまり、次のように因数分解できます。

  x<2>+2x−35=(x−5)(x+7) ・・・・・・(4)

私「すばらしいですね。ひとつ質問ですが、どうやって(3)式を解きましたか」

G「まず、□○=−35に着目して、□と○の数字の組み合わせを考えました。そして浮かんだ1と−35、−1と35、5と−7、−5と7の4通りの中から、□+○=2を満たすものとして、−5と7を選んだのです」

私「完璧ですね。それでは、Gさんに、もうひとがんばりしてもらいましょう。最初の(1)式の答えを求めて下さい」

G「最初の(1)式をもう一度書くと、

  x<2>+2x−35=0 ・・・・・・・・・・(1)

(4)式から(1)式は次のように書けることになります。

  (x−5)(x+7)=0 ・・・・・・・・・(5)

 これが成り立つのは、 x−5=0 または x+7=0 であればよいので、
x=5 または x=−7 です。1≦X≦13 ということですから、結局 x=5 が答えです」

私「正解ですね。ほらこのとおり、トランプのカードは5もです。Gさんは数学が得意なのではないですか。苦手だなんて、うそでしょう」

G「得意だったのは中学時代までです。高校に行ってからは、まったく分からなくなりましたから。それで、理系をあきらめて、文学部の哲学科に行ったのです」

私「それはそれで立派な選択だったと思います。数学も哲学も昔は一緒だったのですよ。Gさんは決して数学の才能がないわけではないと思います」

G「そう言ってもらえると有り難いですね。実は、今までのところで、いくつかわからない点があるのです。質問していいでしょうか」

私「もちろん歓迎しますよ」

 このあと、Gさんから、鋭い質問が次々と出された。それはいずれも、数学の本質にかかわるような質問だった。また、Gさん以外の人からも面白い質問が飛び出してきた。明日の日記で、そのうちのいくつかを紹介しよう。

<今日の一句> 虹立ちぬ 心のなかも 雨上がり  裕


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