橋本裕の日記
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十数年前、まだ定時制高校に勤務していた30代の終わりの頃、2年間ほど名古屋栄の「朝日カルチャーセンター」の短歌教室に通った。講師は現代家人教会の会員で、角川短歌賞次席入選の実績のある栗木京子先生だった。
栗木先生はNHKの教育テレビの短歌講座に出演していたので、短歌通の方は顔も知っているのではないか。笑顔のさわやかな、目のきれいな先生だったが、ブラウン管で見る先生は、またひときわ聡明で美しく見えた。
昭和29年生まれだというから、妻と同じ年齢である。私より4つほど年下だが、気品があって、最初は近づきがたい印象だった。先生に認めて貰いたいばかりに、ずいぶんと創作に熱がはいった。私にとっては、願ってもいない理想の先生だったわけだ。
毎週、歌を5首ほど作り、葉書に書いて先生の自宅に送る。先生はその中から一首をえらび、そうした生徒達の歌を作者名は伏せたままで並べて、その週の教材を作る。20人近くの生徒達は他の人たちの歌に目を通して、自分が気に入った歌をとりあげ、その感想を一人づつ述べる。そして、先生の批評。実作中心の講座なので、真剣勝負の緊張感があり、気が抜けなかった。
全日制の高校に転勤になって、短歌教室に通えなくなったが、よき教師に恵まれたことは、私を決定的に短歌好きにした。最後に、栗木先生の短歌を、講談社学術文庫「現代の短歌」から引用しよう。この本の464ページには先生のさわやかで愛らしい顔写真が載っている。
観覧車回れよ回れ想ひ出は 君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)
舞う雪とその影と地に重なれり 子音を追ひて母音降るごと
白あぢさゐ雨にほのかに明るみて 時間(とき)の流れの小さき淵見ゆ
<今日の一句> 淋しさは 初夏の空ゆく 白い雲 裕
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