橋本裕の日記
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2002年05月06日(月) ちさの花咲く

 私の家の庭先に、ちさの花が咲いている。「ちさ」というのは、エゴの木の昔風の呼び名である。私は「ちさ」の方が好きだ。「エゴ」の木よりは、ずいぶん語感がよい。したがって、ちさの花と書く。

 五弁の清楚な白い花が、うつむき加減に下を向いて、たくさん咲いている。やさしくて、かわいらしい花で、爽やかなかおりがして、いかにも日本人好みの花だ。万葉の昔から、歌にも読まれている。

 知左(ちさ)の花 咲ける盛りに 愛(は)しきよし
 その妻の子と 朝夕に 笑みみ笑まずも  (大伴家持 巻18−4106)

 息の緒(を)に 思へる我れを 山ぢさの
 花にか君が うつろひぬらむ   (作者未詳 巻7−1078)

 ちさの花は、やがてしぼみ、はかなく散る。そこで、恋人の心のうつろう姿を、このように可憐な花にたとえたのだろう。万葉集には「知左」という字があてられている。エゴの木というのは、実がエグイことからつけられたのだろうが、きれいな花がこの無粋な名前ではかわいそうだ。

 万葉集に出てくるゆかりの花は、おもい草(ナンバキセル)、わすれな草(ヤブカンゾウ)、さきくさ(みつまた)など、いずれも美しい名前で呼ばれていた。古人のこころのやさしさ、愛情の深さがしのばれる。

<今日の一句> そよかぜに ほのかに匂ふ ちさの花   裕


橋本裕 |MAILHomePage

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