橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
私の家の庭先に、ちさの花が咲いている。「ちさ」というのは、エゴの木の昔風の呼び名である。私は「ちさ」の方が好きだ。「エゴ」の木よりは、ずいぶん語感がよい。したがって、ちさの花と書く。
五弁の清楚な白い花が、うつむき加減に下を向いて、たくさん咲いている。やさしくて、かわいらしい花で、爽やかなかおりがして、いかにも日本人好みの花だ。万葉の昔から、歌にも読まれている。
知左(ちさ)の花 咲ける盛りに 愛(は)しきよし その妻の子と 朝夕に 笑みみ笑まずも (大伴家持 巻18−4106)
息の緒(を)に 思へる我れを 山ぢさの 花にか君が うつろひぬらむ (作者未詳 巻7−1078)
ちさの花は、やがてしぼみ、はかなく散る。そこで、恋人の心のうつろう姿を、このように可憐な花にたとえたのだろう。万葉集には「知左」という字があてられている。エゴの木というのは、実がエグイことからつけられたのだろうが、きれいな花がこの無粋な名前ではかわいそうだ。
万葉集に出てくるゆかりの花は、おもい草(ナンバキセル)、わすれな草(ヤブカンゾウ)、さきくさ(みつまた)など、いずれも美しい名前で呼ばれていた。古人のこころのやさしさ、愛情の深さがしのばれる。
<今日の一句> そよかぜに ほのかに匂ふ ちさの花 裕
|