橋本裕の日記
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2002年04月20日(土) 映画「蝶の舌」

 北さんにすすめられて、映画「蝶の舌」のビデオをみた。この映画は1936年のスペインのガリシア地方が舞台である。自然ゆたかな田舎町の小学校に、喘息のため遅れて入学した8歳の少年モンチョと、定年を前にした老教師グレゴリオとの心の交流を抒情的にしみじみと描いている。

 少年はグレゴリオから勉強だけでなく自然界の神秘を教えてもらいながら成長していく。村人たちの牧歌的な生活がえがかれ、少女との淡い恋があり、少年たちが参加する村の音楽隊の活動が描かれ、画面には南国スペインの美しい音楽が流れる。

 しかし、そうした心温まる人々の営みの背後に、いつしかスペイン内戦の勃発という政治の暗い影が差しはじめる。そしてやがて軍部のクーデターによる共和派の一斉検挙という悲劇が彼らを襲う。北さんがかって掲示板に、この映画の解説を書いてくれたので、それを引用しよう。

<蝶の舌というのは、ゼンマイのように巻いていて、蜜を吸うときに伸びるのだと、ある授業でグレゴリオ先生は、少年モンチョに教えた・・・。

 1999年のスペイン映画「蝶の舌」(監督:ホセ・ルイス・クエルダ)を見た。老教師グレゴリオの演技がすばらしかった。画面の美しい映画だった。主人公の少年モンチョの表情がよかった。

 歴史の中でも最も暴力と野蛮が支配したと言われるスペイン内戦の前夜1936年。共和派の自由主義を弾圧する軍部クーデターが起こる。グレゴリオ先生も逮捕される。

 それまで共和派支持だったモンチョの父も、連行される仲間だった自由主義者たちに対して「アカ!」「くそやろう!」などの罵声をかける。かけなければ自分が共和派支持者と思われて弾圧されるからだ。母親に言われてモンチョも尊敬する大好きなグレゴリオ先生に対して、ありったけの汚い言葉を投げつける。そして、連行されるトラックに対し、他の子ども達と一緒に石をぶつけながら・・・最後に一言「蝶の舌」と叫ぶ。

 「今は隠れていて見えないけど、蜜を吸う時に巻いていた舌を伸ばすんだ……」とグレゴリオ先生が教えてくれた<蝶の舌>。それは、今はまだ訪れないがやがて来る新しい時代への期待と希望の比喩となった。感動的なラストの一言だった。

検索してみたら、スペイン内戦を題材に扱った映画がかなりあった。
 サム・ウッド『誰が為に鐘は鳴る』(43)
 アラン・レネ『戦争は終わった』(65)
 フレッド・ジンネマン『日曜日には鼠を殺せ』(64)
 ビクトル・エリセ『ミツバチのささやき』(73)
 カルロス・サウラ『歌姫カルメーラ』(90)
 ケン・ローチ『大地と自由』(95)<これは、ファシストと闘う人民戦線派の中の内部分裂を描いた、とても見応えのある作品だった。>

 最後の別れの場面はひどく悲しい。しかし、これが当時のスペインの生々しい現実だったのだろう。この別れに先立って、グレゴリオ先生は引退の日、生徒たちを前にして、「自由に飛び立ちなさい!」と檄を飛ばしていた。暴力と野蛮が忍び寄ろうとしている過酷な現実のなかで、自由こそもっとも大切なものだという、先生の熱い願いのこもった一言だった。

 やがて、少年にこの言葉の重みが理解される日が訪れることだろう。そして、先生の愛に対して、投石で答えた少年たちも、やがて自由のために、ファシスト政権打倒を叫んで、果敢に立ち上がることだろう。


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