橋本裕の日記
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2002年04月06日(土) 律儀な点燈夫

 5番目の星には、律儀な点燈夫が住んでいた。点燈夫は街灯の火をつけたり、消したりするのが仕事なのだが、彼の住む小さな星は、一分間に一回転するので、夜と昼の交代がはやい。

「こんにちは。なぜ、いま、街頭の火を消したの」と星の王子さま。
「命令だよ。や、おはよう」
「どんな命令?」
「街頭の火を消すことだよ。や、こんばんは」
「だけど、なぜ、またつけたの」
「命令だよ」
「わからないな」

「なにしろ、とんでもない仕事だよ。むかしは、理屈にあっていたんだがね。朝になると火を消す。ひるまは休めたし、夜は眠ったものだ」
 星の回転速度がだんだん早くなってきた。命令はむかしのままなので、たいへんである。男は眠ることもできずに、今は働きづくめだ。赤い碁盤縞のハンケチで、ひたいの汗を拭いている点燈夫に別れを告げて、王子さまは、また、旅に出た。

「ぼくは、あのひとだけ、友だちにすればよかったな。だけど、あのひとの星は、あんまり小さすぎる。ふたり分の場所もない星なんだもの」
 王子さまは旅を続けながら、この小さな星と律儀な点燈夫を、なぜだかなつかしく思い出した。

 王さまも、うぬぼれ男も、飲み助も、実業家も、この点燈夫を軽蔑するだろう。「でも、ぼくにこっけいに見えないひとといったら、あのひとりきりだ。それも、あのひとが、じぶんのことではなく、ほかのことを考えているからだろう」と、王子さまは考える。


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