橋本裕の日記
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2002年04月05日(金) 忙しい実業家

 4番目の星には実業家が住んでいた。男はとても忙しそうで、王子がやってきても、顔をあげようとしない。そして、ひたすら何か勘定をしている。

「3たす2は5。5たす7は12。・・・いやはや煙草に火をつけるひまもありゃせん。26たす6は28.ウフッ! うまいぞ。これで5億163万2131になったぞ」
「5億って何が?」
「・・・いや、知っちゃいないよ・・・なにしろ、こんなやまほどの仕事だからな。おれは、だいじな仕事をしているんだ。くだらないことに、かかりあっちゃおられん。2たす5は7と・・・・」

 実はこの男は、「空に見えるきらきらした小さなもの」を勘定しているらしい。それを勘定し続けて、5億何個かになったというわけだ。しかしまた、どうして、この男は星の数を熱心に勘定しているのだろう。

「そのたくさんの星、どうするの?」
「どうもしやせん。持っているだけさ」
「星を持っているんだって」
「そうだよ。・・・持っている星の数をだな、ちょいとした紙の上に書くということだよ。それから、その紙を引き出しの中に入れて、鍵をかけておくのさ」

「それだけ?」
「うん、それでいいんだ」
「ぼくはね、花をもっていて、毎日水をかけてやる。火山も3つ持っているんだから、7日に一度はすすはらいをする。いつ爆発するかわからないからね。ぼくが、火山や花を持っていると、それが少しは火山や花のためになるんだ。だけど、きみは、星のためにはなってやしない・・・」

 実業家は口を開けたが、なにも言うことが見つからない。そもそも王子さまの言葉がまるで分からないようだ。王子さまは王子さまで、「おとなって、まったくかわっているな」と思いながら、旅を続ける。

 ここで、王子さまは実業家に向かって、「何のために」という問いかけをしている。何のために仕事をして、何のためにお金を稼ぐのか。お金をためるだけにお金を稼ぎ、そのために忙しくしているおとなの生き方に、王子さまは疑問を抱くのである。

 お金のためだけに生きるのは、やはり空しいのではないか。それでは人は何のために生きるのだろう。人が幸せになるために大切なものは何だろう。王子さまはそう考えて、旅を続ける。やがて王子さまは地球へ来てその解答を見出すわけだが、その前に、まだ途中の星が2つ残っている。


橋本裕 |MAILHomePage

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