橋本裕の日記
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昨日に引き続いて、「瀬戸内寂聴の人生相談」の話をしよう。寂聴さんのころもいじめはあった。そして寂聴さんもいじめっ子だったという。もっとも、寂聴さんがいじめるのは、弱い子ではない。弱い子をいじめるいじめっ子を、寂聴さんがいじめるのである。つまり、いじめっ子を征伐する係りだったらしい。
そんな勇ましい寂聴さんにも、コンプレックスはあった。なにしろ色白で器量の良い姉となにかと比べられるからたまらない。むしろコンプレックスのかたまりだったという。その反動で、勝ち気で負けず嫌いの、お転婆の少女になったのかもしれない。
しかし、いくら強がっていても、自分が不器用だという負い目は少女の感じやすい胸をいつも悲しく波立たせる。そこで、何とか白いきれいな肌になりたいと思って、お風呂に入るとき軽石でこすったりしたのだという。
それから、洗濯鋏で鼻を挟んで寝た。そうすれば、少しは鼻が高くなって、見栄えがよくなると思ったらしい。ところが、母親がこれを見て、びっくりして、理由を尋ねた。そこで、鼻を高くするためだと答えると、母はニッコリ笑って、「そんなことしなくったって、おまえの鼻はかわいいよ」」と言ってくれた。
この言葉で、寂聴さんは「そうか、私の鼻は可愛いんだ」と思うことが出来て、自分に自信ができたのだという。低くて見栄えのしない団子鼻でも、「可愛い」と言われれば、たしかに「可愛い」と思えてくる。彼女の心を明るくし、彼女の未来を明るくしてくれたのは、そんな母親のちょっとした言葉だった。
矢崎さんは金子みすヾは「母親のような人だ」というが、寂聴さんも「母親のような人」である。かって彼女自身母親に「可愛いよ」と言われたように、今は「あなたたち、ひとりひとりみんな違っていて、みんな素敵なかけがえのない存在なのよ」と母親の役を演じ続けている。
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