橋本裕の日記
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「おもいでぽろぽろ」という映画を見ていたら、主人公の少女が分数の割り算ができなくって、数学が嫌いになるエピソードが出てきた。たとえば「2/3割る1/4はいくらか」という問題がある。主人公の少女は、この問題の意味がどうしても分からない。
そこで、年上の姉に聞くわけだが、優等生の姉は「分数の割り算は、ひっくり返してかければいい」と教えてくれる。だから、「九九さえ出来れば分数の割り算は簡単だ」と言う。
ところが、主人公の少女はどうしても問題の意味にこだわってしまう。そこで、「そもそも2/3を1/4で割るということはどういうことか」と姉に訊くわけだが、優等生の姉もこの問いには答えることができない。ただ機械的に、その手口を暗記していただけだからだ。
映画ではこのあと主人公の少女は数学が嫌いになった代わりに、作文や演劇などで才能を発揮して、家族にも存在を認められることになる。一般的に言えば、「彼女は数学には向いていない。文化系の資質がある」ということになるのだろう。
しかし、よく考えてみれば、この少女の方が優等生の姉よりもよっぽど真剣に問題を自分の頭で考えていた、つまり「ほんとうの数学」をしていたのである。彼女はたしかに文化系の才能があるが、それ以上に数学の才能もあるのだと言わなければならない。
映画を見ながら、この分数のエピソードに共感を覚えた人が結構いるのではないだろうか。そして中には、この少女のように自分の数学的才能を自覚しないまま、数学嫌いに転落していった人もいるのだろう。
私はどちらかというと、「分数の割り算は、ひっくり返してかければいい」と単純に考えていた口だった。おかげで、小学校、中学校と数学で挫折感を味わわなくてすんだ訳だが、いまごろになって、「これは一体どういうことだ」と頭を抱えなければいけなくなった。数学の教師として恥ずかしい限りである。
さて、分数の割り算についてだが、私はこれを小学校で教える必要性があるのか疑っている。こうした意味不明の、現実と遊離した難問奇問は、数学の教育にとって何の益ももたらさない。
天下り式に計算の規則を暗記させるやりかたは、自分の頭で考えることが好きで、数学的才能に恵まれた人間を、かえって数学嫌いにするだけかもしれない。数学だけではなく、日本の受験式教育は勉強嫌いを大量生産しているだけのような気がする。
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