橋本裕の日記
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2001年10月14日(日) テロに備えるには

 アメリカでガスマスクが売れているという。殺人ガスによるテロから身を守るためだが、専門家によると気休めにしかならないらしい。殺人ガスの種類が多く、そのいずれにも効果がある万能マスクはないからだ。

 化学兵器も怖いが、生物兵器も怖い。筆頭が「炭疽菌」だろう。米NBCテレビの女性職員の炭疽菌保菌の原因になったとみられる郵便物と同様に不審な郵便物が、ニューヨーク・タイムズ紙本社や国連本部、ネバダ州のマイクロソフト関連会社に届いたらしい。フロリダ州に端を発した炭疽菌問題は全米に広がり、FBIは刑事事件として本格的な捜査を始めた。テロとの関連も有力視されている。

 生物兵器の専門家の報告書では、炭疽菌は「想定すべき生物剤」のトップに天然痘ウイルスとともに挙げられている。保存や運搬がしやすく生物兵器として便利で、空中散布や飲料水に混入する手口もあるという。

 肺から感染した場合、発熱やせきに続いて呼吸困難に陥り、致死率はほぼ100%。皮膚の傷などからも体内に入り、この場合の致死率は25%だという。初期症状には抗生物質が有効だが、1〜6日間の潜伏期間の後、病状が進めば救命の手段はなくなる。

 生物兵器はコストが安く「貧者の核爆弾」と呼ばれている。1平方キロに大損害をもたらすには通常兵器2000ドルに対し、生物兵器はわずか1ドルだ。炭疽菌900キロを詰めた弾頭を落とせば、一つの都市を丸ごと汚染することができる。
 
 1999年に「ベクター−媒介−」(ロビン・クック著)という小説がアメリカで出版された。アメリカに恨みを持つ犯人がニューヨークで炭疽菌を使った無差別テロを計画し、最初はダイレクトメールで効果を試す。さらに、セントラルパークと連邦ビルで大量散布を試みるという内容で、今回の事件はこの小説を下敷きにした犯行かもしれない。

 アメリカ国務省はビンラディン氏が率いるテロ組織「アルカイダ」は、炭疽菌など生物・化学兵器になりうる物質を大量に保有しているらしいと発表している。核爆弾を所有している可能性はほとんどないとしながら「放射性物質を撒き散らす兵器の製造は可能」とも述べている。

 テロに備えるには、ある程度の安全対策や危機管理が必要なことはいうまでもない。しかし、そうしたものにだけ頼っていては、私たちの安全は永久に実現できない。実際のところ、巨額の税金を投入し、検問を強化して市民の人権と自由を大幅に奪い、極端な管理主義体制をしいても、その可能性を0に近づけることは至難の業である。

 そうした効果の怪しい、気休めでしかないテロ対策に莫大な費用を使うくらいなら、その何分の1かのお金を難民対策や最貧国の援助にあててはどうだろう。報復とテロの悪循環を断ち切ることが、一番有効なテロ対策だからだ。


橋本裕 |MAILHomePage

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