橋本裕の日記
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作家の村上龍さんが「同時多発テロの意味」というテーマで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)カブール事務所所長の山本芳幸さんと対談をしている。私はその内容を村上さんのメールマガジンで読んで、少しタリバンの実体がわかった。
米国よりの一方的な報道が行われる中で、現地の国連事務所の責任者としてアフガンの現状やタリバンを知り尽くしている当事者の発言には重みがある。少し長くなるが、山本さんの発言を中心に日記に引用しておこう。なお(括弧)の中が村上さんの言葉である。
ーーーーーーーーーーーー「同時多発テロの意味」ーーーーーーーーーーー
僕らは日常タリバンと一緒に仕事をしていて、要するに彼らは取引先みたいなものなわけです。タリバンはアフガン国民をいかにして救うかということに本 当に必死です。タリバンにも外務省や厚生省などのように色々な省があります。その人たちはその仕事を懸命にやっていて、お金もほとんどありません。それでもなんとか国民を助けようとしています。
そういう省の建物も日本人からは想像もつかないくらいにボロボロです。第三世界の政府の人間はものすごいお金持ちが多いですが、タリバンは本当に質素です。着ている服もボロボロだし、靴下も履いていない。食べ物も質素。
国連からのお金で毛布や布団を作って、国民に配給するときも僕たちが一緒にプロジェクトを進めます。タリバンもまったく普通の人たちです。盗みもしません。安心して仕事を一緒にできます。・・・全般的に言うと、パキスタンで仕事をするよりもタリバンの支配下にある方が仕事がやりやすかった。
タリバンがアフガニスタンを制圧していく中で、実際にはほとんど戦闘は起こっていません。アフガン人にとっては、とうとう救いの人たちが現れた、という思いで、タリバンが入ってきたら大歓迎された。92年4月に共産政権が倒れた後、ムジャヒディン同士の壮絶な戦闘が始まりましたが、その当時、アフガニスタンは完璧なアナーキーな状態です。局地支配をしているムジャヒディンが自分の支配地域で略奪・レイプやりたい放題です。
誰もがそんな状態にうんざりしていた。そこに秩序の回復を最優先とする集団が現れた。それがタリバンです。彼らは略奪もレイプもしなかった。彼らが真っ先にしたのは武装解除です。タリバンが非常に短い期間に支配地域を拡大することができたのは、タリバンのそんな評判が口コミであっという間にアフガニスタン全土に広がり、それに対する支持があったということを考えないと説明しきれない。
(テレビで放送される難民のインタビューのほとんどは、タリバンに支配される苦しみの声です。昔の王政を懐かしむような声も放送されています)
難民はどういう答えをメディアが求めているか知っているんです。
(今、実はタリバンは武力専制ではない政治を行っているとか、質素で誠実だとか、そういう情報が入ると、考えなくてはいけなくなります。タリバンが悪逆非道な連中だと決めつければ、考えることは少なくてすみますね)
今、そういうことを言うと、"タリバン派"だと決め付けられてしまいますしね。タリバンのやった秩序回復・治安維持の功績は大きいと思います。内乱状態を収めることは他の誰にもできませんでした。内乱を収めて治安維持を行わなければ、次のステップには進めません。
カブールのような都会にはタリバン嫌いが多いんです。昔はミニスカートがはけたのに、タリバン以後ははけなくなったというようなことです。しかし、カブールのような都会を除けば、ほとんどは何も変わっていません。
アフガン人女性の人権団体で今活動している人たちがメディアで取り上げられていますが、ほとんどは毛沢東派と呼ばれるようなコミュニスト達で構成されています。コミュニストだからダメだというわけではないんですが、かつて冷戦下アメリカでは冷遇されていたのに、今は使えるのでどんどんメディアに露出しています。
北部同盟を応援するとアメリカは言っていますが、彼らが行ってきた酷いことはアフガン人の記憶に生々しく残ってます。略奪、レイプにハザラ族の虐殺も しているし一般の人の支持なんて全く考えられない。彼らを政権に就かせると いうのは空想物語ですね。
ここ数年間のタリバンの最大の望みは承認してもらうことなんです。でも、アメリカは彼らを承認しない。アメリカが承認しなければ、他の国もついていきません。おかしいのは189カ国あるなかで、その中には入れてあげないといっておきながら、色々と注文をつけるわけです。国際社会のルールを遵守しろと迫る。
それは論理としておかしいと思います。村八分にして村の掟に従えというのはありえない話です。タリバンはルールの外に置かれているからルールに従わなくていいという論理もあるわけだから、国連の中でも一部の人たちはすぐに承認すべきだったと言っています。国家として承認されてしまうと様々な義務が発生します。条約も守らなくてはいけないので、どんどん国家らしくなっていきます。今、彼らをアウトローだと言っている人たちが彼らをアウトローにしているという側面もあるわけです。
だから何も失うものがない。国家でもないし、爆撃すると言ってももう壊すものもない。食べるものもない。そこへの攻撃は何の意味もありません。影響があるとするなら、イスラムへの同情心でアメリカが孤立してしまうことです。日本もそうなる可能性があります。
今CNNの画面には常にWAR AGAINST TERROR と出ています。それは具体的なテロに対する戦いという意味ですが、抽象的に訳せば、テロに対する戦争とも取れます。テロ対戦争ならテロが勝つに決まっているんです。テロはルールの外で、戦争はルールの中で戦うわけですから、結果は見えています。どうしても勝とうと思ったら、戦争側もテロをやるしかない。泥沼というのはそういうことです。
イスラマバードにアメリカ兵が来たりすると、内乱状態になってしまう可能性もあるんです。そうなると一番心配なのはインドの相乗りの攻撃です。パキスタンも、「来るなら来い!核撃ちこんでやる」みたいな感じになって混乱しています。
テロを撲滅するにはどういうオプションがあるのかということをまったく議論していないですよね。一つのオプションとしてアメリカがたまたま軍事攻撃というのを出しているだけで、それがベストかどうかを他の国が検討しない。その他のオプションを提示することが本来の貢献ではないかと思います。
日本の報道で本当におかしいと思ったことがあります。トランジットでバンコクの新聞を読んだのですが第一面の見出しに"Afghan Offer Rejected"と大きく書かれてる。どういう内容かというと、タリバンが宗教者を集めて会議をしてその中で、ビンラディンに自主的に国外に行くように勧告しましたよね。それはタリバンにとっては、もうほとんど自殺行為に近い決定だったんです。
アフガンにとってはとても大きなシグナルなんです。でも、アメリカはそのシグナルを無視してしまった。だから、見出しの意味は、「アフガンが出した申し出が拒絶された」ということです。見出しの書き方としては正確です。ところが、日本の新聞を見たら、"ビンラディン引渡し タリバン拒否"と書いてあるんです。意味がまったく反対です。読んでいると、「タリバン強硬姿勢を鮮明に」とか書いてあってまったく正反対のことが書いてある。本当はブッシュが強硬姿勢を鮮明にしてタリバンはそれを何とか緩和しようとしてものすごい決断をしている。
日本の新聞記者も取材によく来るんです。そのときに僕は、そういうことを話すんですが、そういうことを記者が書いても記事にならないみたいですね。
もともと女性はブルカを被って顔を隠していたんです。一部に東京のような大 きな街があって、そこの人たちだけは被っていなかった。まずは、都市の人も 宗教的な戒律を守って治安を維持していこうということだったんです。
現段階で550万人くらいの人がアフガニスタン国内で餓死寸前なんですが、それが750万人くらいまで増加する可能性がある。つまり、予測不能の期間、援助機関がアフガニスタン国内に入れないとそんな数の人間が戦闘とは関係なく死んでしまう。戦闘による犠牲者ももちろんでるでしょう。国連総会で軍事行動を支持するような決議が出てしまう可能性もありますが、その一方で国連はこういう情報を出して警告しているんです。こういう情報は国家の行動に影響を与えるかもしれない。そういう意味で重要だと思うんです。
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