橋本裕の日記
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| 2001年10月11日(木) |
もし、テロに襲われたら |
外交評論家の岡本行夫さんが「毎日新聞」に掲載された「相対主義に決別を」と題する論文の中で、「テロは大悪。市民殺戮(さつりく)も大悪。6000人殺害に至っては言葉もない。『アメリカもテロリストも、どっちもどっち』というわけしり顔の相対論に今回は決別しよう」と書いている。
「国際法には「復仇(ふっきゅう)」という概念がある。武力紛争の最中などに違法行為が行われた時に、その再発を防ぐ他の手立てがない時には、こちらも違法行為を行ってよいという概念である。『違法行為を国際法が許すなんて!』と金切り声が聞こえてきそうだが、国際社会は、我々お人よしの日本人が考えているより余程冷厳なのである」
「アメリカで起こったようなテロが日本で起こっても日本の自衛権は発動されないとしよう。日本はテロへの強い非難声明を出し、それから「恐れながら」と国連に願い出ることになる。テロリストたちから見てこんなにラクチンな国はない。原理主義過激派が文明社会に鉄槌を下そうと考える場合には、最も抵抗力の弱い日本を狙うのがいちばん怖くない」
「北朝鮮がミサイルを撃ち込んで百人殺す場合には自衛隊が出動してもいいが、テロリストたちがサリンを撒き散らして一万人殺されても自衛隊は出ちゃいかんというなら、国民みんなで年間5兆円も負担して高度に訓練された防衛のプロ集団にいてもらう必要もないのだ」
岡本さんは、もし日本がアメリカと同様なテロに見舞われたら、自衛隊を派遣して、アメリカ同様にタリバンを攻撃すべきだという考えらしい。これもまた「自衛権」の発動だというのである。正直言って、こうした主張が日本の大新聞の論壇で堂々となされていることに驚いた。
しかし、考えてみれば、アメリカで起こったことが日本で起こらないという保証はない。もし、今回狙われたのが日本の高層ビルで、やはり1万人近い死傷者が出たとしたら、私たちはどのような対応をとったらいいのだろう。
私は基本的に「目には目を」の精神に賛成だ。殺人者は死刑に値する。テロリストは死刑に値する。実行犯だけではなく、支援者も同罪だろう。だから、彼らを捕捉して国際法廷で死刑を宣告できればいちばんよい。
しかし、容疑者であるビンラディンを捕捉するのはむつかしい。タリバンが渡そうとしないからだ。そうすると容疑者をかくまうタリバンも同罪だということになる。それではアメリカに習って自衛隊を派遣し、アフガン攻撃をすべきだろうか。
もちろん武力行使のために自衛隊を派遣することは違憲である。これを「自衛権の発動」などと強弁することは許されないだろう。この場合は憲法や法律の改正をしなければならない。その上で国際社会の理解を得る必要がある。少なくともアメリカの協力は不可欠だろう。
こうしたことが可能だととうてい思えないが、1万人も殺されれば、あるいは世論が動き、アメリカも自国の国益を考えて日本に同調するかも知れない。そうすると、日本の自衛隊がアメリカ軍やその他の国々の軍隊とともにタリバンを攻撃できるかもしれない。
しかし、たとえビンラディンが有罪であり、彼をかくまうタリバンが 同罪だとしても、アフガンの多くの人々まで同罪だとすることは人道上問題がある。無実の人々が犠牲者となり、多くの人々を難民化する武力による実力行使は避けるべきではないか。
それでは、どうしたらいいのだろうか。私は日本はまずテロの温床となる難民対策に乗り出すべきだと考える。世界最貧国で世界最大の難民を持つアフガニスタンに積極的に経済援助をして、この国をもとの緑豊かな牧畜と農業の国に戻してやるのである。
そうすれば、イスラム原理主義もタリバンも自然消滅するに違いない。ビンラディンを捕捉することもできるだろう。回り道でも、これが一番確実な方法であり、かつ根本的なテロ対策に違いない。これは日本がテロに襲われた場合の架空のシナリオだが、アメリカに対しても、かくあってほしいと切に願わずにいられない。
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