橋本裕の日記
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オランダは自由と平等の国である。カソリックの支配にも屈せず、スペインの覇権主義にも抵抗した。そうした歴史の中で戦い取られたのが「自国の独立」であり、「自由と平等」の民主主義だった。
ところがそのオランダが共和国ではなく、れっきとした君主国であるというのが、また面白いところである。一切の上下の関係を認めず、命令や強制を嫌う国民性とこうした君主制がどのように両立し調和しているのか。この問題を解く鍵は、オランダの国の成り立ちにある。
オランダの王制の始まりは、スペイン独立戦争を果敢に戦い、最後は暗殺された国民的英雄のオランニュ公ウイリアム一世に始まっている。そして現在の君主であるベアトリクス王女もオランニュ家の生まれだ。オランダ人は自分の国の歴史に誇りを持っている。そしてそれは同時に、オランニュ家への尊敬と愛情に結びついている。
オランダの君主は日本の天皇やイギリス、スエーデンの君主とはちがって、随分庶民的である。ベアトリクス女王は随員もつれずに市電に乗り、一般人と同じようにデパートで買い物をするという。女王だということで偉ぶることはない。そこには君主という堅苦しさや威厳は感じられない。
ちなみに日本の初代の天皇は神武だというが、この人物がどんな人物かよくわからない。わかっているのは大陸からやってきた渡来人の系統らしいということくらいだろう。そして天皇の支配を正当化するために、神懸かり的な神話が利用されてきた。
イギリスやスエーデンの王朝にしても、もとを質せば外部からやってきた征服民の王である。この点、オランダはちがっている。しっかりと自国の歴史に足場を持ち、たしかな由来を持っている。そして、尊敬と敬愛を受けるだけの実績を持っている。まさしく国民の統合の象徴であり、民主主義の象徴なのだ。
国民の祭日の一つが、4月30日の「女王の日」だ。この日は都市から農村まで、国中でフリーマーケットが開かれる「倹約の日」でもある。各家庭では不要になったものを持ち出し、それを道路や広場に並べて売る。
「この日、広場や人通りのある道へ出ると、びっしりと露天が並び、子供たちだけで店を出していたり、笛を吹いたりで大きな縁日のようです。普段は締まり屋のオランダ人ですが、この日ばかりは、子供たちのコーラスや楽器演奏に、気前よく1ギルダー硬貨をポンポンと投げ入れます」(「物語オランダ人」倉部誠)
このフリーマーケットは、貧乏で玩具が買えない家庭の子供たちが、他で不要となった玩具を格安の値段で手に入れられるようにするためにはじまったのだという。これがいまや全国に広がった。しかもそれが、「女王の日」だというところに、国民の王室によせる気持が現れている。
ちなみにこの「女王の日」は先代のユリアナ女王の誕生日だという。現在のベアトリクス女王の誕生日が1月で季節が悪いので、国民の便宜を図り、あえて、先代の誕生日をそのまま使っているらしい。オランダの君主制はこのような国民生活優先の合理主義のうえに成り立っている。
オランダの君主は最初から現代まで「民衆のために」という立場を崩さない。この点が国民に評価され、いまや君主制はゆるぎのないものになっている。信じられないことだが、民主主義の最先端をいくオランダで、各都市の市長はベアトリクス女王が直接に任命している。それでいて、どこからも文句は出ないらしい。
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