橋本裕の日記
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2001年08月27日(月) 麻薬や売春を容認する国

 ノルウエーの皇太子がシングルマザーの婚約者と25日に結婚式を上げた。婚約者が過去に麻薬が使われたパーティに出入りしていたらしく、この点が将来の王妃の資質として問題になったが、彼女は記者会見で自らの「乱れた過去を」を涙混じりに告白して、むしろ人気が急上昇したという。

 アメリカをはじめとする先進国は「麻薬問題」に悩まされている。オランダもその例にもれないが、その対処の仕方を見ると、いかにもオランダ的であることがわかる。アメリカのように外科手術的にこれを「犯罪」として除去するのではなく、「容認して、管理する」というのがオランダのやりかただ。

 オランダでは、麻薬であるマリファナやハッシンを公然と「コーヒーショップ」で買い、吸うことが出来る。こうしたことが合法的に行われている国はオランダ以外ない。もう4半世紀近くおこなわれているが、これによってオランダ国民がとくに麻薬中毒になったことはない。

 統計によれば、70年代には1万数千人いた中毒患者が98年には5018人に減少しており、しかもこのうちの62パーセントは外国生まれのマイノリティだという。しかも中毒患者の90パーセント以上はコンピューターのデーターベースに入れられて管理されているという。ドイツやフランスなど周辺諸国から苦情を言われながらも、オランダがこの政策をかえなかったのも、実績があがっているからだ。

 完全になくなることのない問題をなくそうとしても、それは表向きのことだけで、かえって地下に潜り、マフィアなどの犯罪組織をはびこらせるだけだ。オランダ人は麻薬をやりたい人がいれば少しくらいならやってもとやかくいわない。そして、むしろそれを公にして、その害を少なくするようにコントロールすることが大切だと考える。

 こうしたオランダ流の考え方はよくわかる。私も以前定時制高校に勤務していたとき、4年生の生徒を2回ほど修学旅行に連れていったが、もちろん高校生だから「アルコールは禁止」だった。しかし、実際のところ、飲むなと言っても、隠れて飲むことはわかっている。

 そこで、どうしたかと言うと、「どうしてものみたい奴は部屋に集まれ」と招集をかけて、ホテルにアルコールを注文し、そこで教員と一緒に飲ませた。20歳未満の生徒も大目に見たのは、隠れて飲まれるより教員の目の行き届いたところで飲ませた方が事故につながらないと考えたからだ。これも「容認して管理する」というオランダ方式だと言える。

 こうした方法がオランダでは「売春」や「安楽死」の問題にも適用されている。アムステルダムの「飾り窓」は一度訪れてみたい観光名所だが、正規の手続き踏めばだれでもそこで売春が出来る。「麻薬」や「売春」は禁止してもなくならない。だからこれをコントロールして、これによってもたらされる問題を極小にしようという発想は現実的で合理的である。「悪」を直視し、これを制御しようという意志がうかがえる。

 オランダでは94年に世界に先駆けて「安楽死法」が実施された。オランダはホームドクター制を取っていて、「安楽死」を行うのは患者を長年診てきた馴染みの医者である。そして日本で見られるような延命治療はない。長坂さんは「オランダモデル」のなかで、「尊厳死ができるというだけでも、オランダは永住したいと思うに足る国だ」と書いている。

 原理原則にこだわらないフレキシブルな問題解決法は、治水の歴史から学んだものらしい。災害は必ず起こる。これを根絶やしにすることはできない。問題はどうやって、その被害を最小限度にとどめるかということだ。そしてオランダ人の人間に対する洞察の深さである。オランダの「寛容の精神」は、こうした強靱な合理精神と英知に支えられているようだ。



 


橋本裕 |MAILHomePage

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