橋本裕の日記
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2001年07月19日(木) ローマ帝国の光と影

 高校生の頃、古代ローマを舞台にした2本の見事なスペクタクル映画をみた。一つは「ベンハー」であり、もう一つは「スパルタカス」である。大方の評判と違って、私が好きなのは断然「スパルタカス」である。

 ローマの圧制に対して立ち上がった剣奴たちの反乱が、壮大なスケールで描かれていて、高校生の私はたちまちこの映画のファンになってしまった。それ以来、ローマについて、いろいろと本を読んだりしたが、どうしてもローマ帝国憎しの気持が先にたってしまう。

 ローマ帝国は私の尊敬するアルキメデスのシラクサを滅ぼし、この老人を惨殺した。シラクサは焼き討ちと略奪で完全に破壊され、数日間で廃墟と化したという。そして、同じことをローマはその後、いたるところで繰り返した。

 シラクサが亡びたのがB.C212年のことだが、その数年後にはギリシャ本土がローマ侵略軍の手に落ちている。そしてカルタゴがシラクサ同様に略奪を受けて完全な廃墟と化すのが、62年後である。

 ギリシャ人の多くは奴隷にされた。家庭教師や芸術家として扱われたのは一部で、多くは牛馬のような肉体労働者として使役されるか、スパルタカスのような剣奴として売られた。

 ローマ人の悪行は大規模な侵略戦争による殺戮行為よりも、最大の娯楽施設コロセウムで行われた出来事に象徴的に現れている。そこで市民の娯楽のために剣闘士が戦って死に、戦争捕虜、囚人、キリスト教徒たちが一度に5000匹もの野獣の餌食にされた。

 あるものはそこで生きたまま磔にされ、埋められた。興奮した市民たちが、さらに血を見たいと歓声をあげると、人工の池が掘られ、19000人もの剣闘士たちによる海戦が、人工池に血が満たされるまで続けられたという。キリスト教徒の皇帝になってからも事態はかわらなかった。キリスト教徒のかわりに、異教徒たちがライオンの餌食に供されたからだ。

 P・ベックマンは、「ローマ人の科学への貢献は、古代の偉大な数学者を殺したこと、アレキサンドリアの図書館を焼き払ったこと、皇帝の植民地で栄えていた科学をゆっくりふみつぶしてしまったことでほとんどつきてしまう」と、「πの歴史」のなかに書いている。

 最近、北さんが連載した「ローマ人の物語をよむ」などを通して、古代ローマの別の一面を知った。キケロやセネカの作品を読むうちに、ローマ帝国に対する見方も、ずいぶん修正された。とはいえ、私は古代ローマを賛美する著作には、いまだに不信感と違和感を抱かないわけにはいかない。


橋本裕 |MAILHomePage

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