橋本裕の日記
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| 2001年07月08日(日) |
円周率に見る数学の歴史(2) |
数学はギリシャから始まったと言われる。それは初めて証明ということを考え出したのが、ギリシャ人のターレス(前640〜546)だからだ。二等辺三角形の底角が等しいことや、1辺と両端の角が等しい三角形は合同であることを彼ははじめて証明した。また、円の研究をして、直径の円周角が直角であることも彼が証明した。
ターレスの後、ピタゴラスやユークリッド、アルキメデス、アポロニウスが出て、ギリシャ数学の黄金期を築いた。ギリシャ人の特徴は、それまで知られていた経験的知識を「定義」「公理」「定理」と言った概念を使って、厳密な理論的体系に組み立てたことである。
なぜギリシア人が初めてこうしたことを達成できたのか。それは彼らがチャレンジ精神に満ちた先進的な海洋民族として、国際的に自由に活動していたからだ。政治的・経済的な自由が保障される中で、しかもターレスにみられるような富の裏付けのある余暇時間があったことが、こうした成果となって現れたのだろう。
強権的な王権や、宗教的権威がつよい社会では、思考の自由と自立を尊重する数学や哲学は生まれようがない。ターレス以後、ギリシア世界はさらに発展し、高度な文化を花開かせ、さらに「民主制」という政治的にも画期的な発明をした。
「数学」と「民主主義」は実は深いところで結びついている。一言でいえばそれは「いかなる権力や権威にも毅然として、自分の頭で自由にものを考え、自分の正しいことを正々堂々と主張できる人間」を育て、またそうした人間たちによって支えられているということだろう。
しかし、ギリシャ世界が凋落した後、数学や哲学は衰退した。西暦最初の1000年間のヨーロッパは学問的に言えば、暗黒時代であったと言えよう。なぜ、ギリシャの学問の伝統がヨーロッパにおいて衰退したのかと言えば、キリスト教の影響が大きい。
キリスト教は啓示宗教だといわれるように、真理は神から預言者に啓示によって与えられ、それを記した「聖書」の中に書かれてあるとされた。人間が経験をもとにして、自分の頭で論理的に考えること、すなわち「証明」によって真理が明らかにされると考えたギリシャ人の合理思想とはあいいれない。
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