橋本裕の日記
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私はこの歳になるまで、あまり大病をしたことがない。ただひとつの例外は、小学6年生のころに、ジフテリアにかかったことだろう。このときは、病院の隔離病棟に入れられて、ずいぶん心細い思いをした。
病室の壁に、落書きがしてあって、私は熱のある目で毎日それを眺めていた。いずれも病人を励ますような人生の格言だったが、そのなかに英語の詩があって、「夜は千の目をもつ・・・・」という訳文がついていた。退院後も、訳文のこのフレーズが記憶に残った。
ところが、高校1年生の頃だと思うが、英語の教科書でたまたま同じ詩に巡り会った。思うに、病院の壁にこの詩を書き付けたのも、おなじ教科書でこの詩を学んだ高校生だったのかもしれない。たしかに魅力的な美しい詩だった。
その後、私の頭から詩の記憶は薄れたが、不思議に「夜は千の目を持つ」というフレーズだけは残った。そして、何かの折りに、浮かぶのである。私が覚えているのは、その一節だけで、一体誰の詩かも忘れてしまった。
是非、その詩や作者をを知りたいと思っていたが、何十年間も、手がかりが得られなかった。ところが、昨日、ふと思い立って、インターネットで「The night has a thousand eyes」を検索してみると、十分足らずで、おめあての詩らしいものを載せたサイトを探し当てることが出来た。
Light
The night has a thousand eyes, And the day but one; Yet the light of a bright world dies When day is done.
The mind has a thousand eyes, And the heart but one; Yet the light of a whole life dies When love is done.
- Francis William Bourdillon 高校1年生の教科書に載っていた詩ならば、そんなに難しい詩であるわけはない。しかし、日本語に訳そうとして、難渋した。この詩は、このまま英文で味わうのがいいのかもしれない。そう思いながら、とりあえず訳をしてみた。
かがやき
夜は千の目を持つ。昼はただひとつだけ。 しかし、昼が終わるとき、世界は輝きを失う。
理性は千の目を持つ。心はひとつだけ。 しかし、愛が終わるとき、人生も輝きを失う。
理性は千の目をもつというのは、世の中には様々な思想があるということだろうか。愛が目覚めるとき、こうした理性は光を失う。こんなふうに解釈したが、これでは「夜は千の目を持つ」という夜の世界の神秘性が生かされない。もっと違った訳があってよさそうだ。
作者のF.W.ブーディロン(F.W.Bourdillon1852〜1921)は、愛、戦争、死など、いろいろなテーマで詩を書いていた、ほとんど無名なイギリスの詩人だという。 (参考) Mukku's Lapu-lapu Poetry site(英米詩と洋画のシナリオの紹介)
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