罅割れた翡翠の映す影
目次|過去は過去|過去なのに未来
| 2002年07月19日(金) |
本当に壊したいもの 缶太郎 |
ふぅ…やっと復活したっぽい。 体調、概ね良好。 破壊衝動が代わりに強いけど、抑え込めない程じゃない。 何とかなる。 何とかする。
インテリアとして買ってきた花の種。 自分で撒いて、育てて芽が出て来た頃。 引っ繰り返されて、その上出たばっかりの芽を踏まれた。 謝罪も無く、ただ黙ってその人は新聞を読み始めた。 そのままの笑顔で、彼を席に通し、シャンプーした。 彼はカットの他に髪染めをしていって、二時間強この店に居た。 結構地位のある人間なのだと、語っていた。 有難う御座いました。 そういってお見送りをした。 結局彼は、一度も自分の引っ繰り返していった鉢の話題に触れなかった。 その日は忙しく、こぼれた鉢に構ってやる事は出来なかった。 結局、店を閉めてから土を集め、種と分けて、埋め直した。 店長は『それ、もうダメだよ』と言った。 確かに、その日からその芽は伸びなくなった。 少しずつ、しおれていくように見えた。
僕は、オトナが大嫌いだ。 だから、笑顔で接客して、『有難う御座いました』なんて言った自分も嫌い。 必要なのは解ってる。 相手は偉い人だ。 ご機嫌をすぐに損ねる厄介なオトナだ。 だから、それ以上に『大人』な態度で接しなければならない。 ご機嫌を損ねないように。 解ってる。 そう解ってる、それが黒が一番嫌った自分自身の姿なんだって事。 僕らの中にある真っ白な衝動がぶち殺したいのは、 鉢を引っ繰り返しても無視するあの偉いオトナなんかじゃなくて、 …そんな自分自身だって事。
僕は鋼の殻だ。 果実と果肉の中に眠る種子を護る殻。 やがて実が地に落ちて芽生えるその時まで。 その時には、僕は彼の為に腐れて土に還るのかな。 その時には、黒のその望みも満たされるのかな。
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