罅割れた翡翠の映す影
目次|過去は過去|過去なのに未来
| 2002年06月14日(金) |
遠い眼をしている事 缶太郎 |
遠い目をしている、とよく言われる。
剣道の教えに、『遠山の目付け』ってのがある。 敵の竹刀とか顔ばっかり見るのではなく、 遠くの山を見るように視線を遠くに置いて敵全体をいつも見るようにし、 かつその全体に集中する事とかなんとか、教えてもらった。
いつも、近い所ばかり見ていると、思わぬ所に重要な事がある事に気付かない。
全体を見渡し、状況をなるべく正確に把握する。 その上で迅速に行動する。 別に武道に限った事じゃない、何にでも当てはまる事。
タダでさえ大してよく見えない眼なのだから、 どうせなら全体を見渡していた方が失敗は少ない。 下手に眼を凝らすよりは、一歩下がって見た方が色々な事に気が付き易い。 だから、僕は意識して『遠い目』をしている。
いつもの、もう住み慣れてしまった街の風景。 視線を、少し遠くに持って行った事があるだろうか。 それは、屋上から眺めた街のように、別世界を僕に見せる。
例えば遠くの高層マンションを見つめるのと 目の前の道路を走る車を見つめるのでは、景色が違う。 くだらない事なのかもしれないけど、素直に感動した。 夕方の色と、そびえる石の塔が違う街並みを映し出していた。 遠くを見なければ、決して気付かない光景。 いつもの帰り道が、急に新鮮味を帯びて僕を送った。
下ばっか向いたって、無情なアスファルトばかり。 近くばっか見たって、余所から足をすくわれる。 上を向いて、真っ直ぐ前を見て、目をそらさないで、全部を見つめて認めて。 そうやって生きていきたいから。 僕は、『遠い目』をしている。
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