J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2006年01月30日(月)    レイの“体内”に入った“私”はその記憶を呼び戻した。

J (3.秘密の恋愛)

11. 一夜の夢 (37)


快感がふたりの身体に広がる。
“私自身”の先端がレイに入ったというだけなのに、
電流にしびれるように身体中が感じてしまう。

電流がつま先から頭の芯まで突き抜けて、
恍惚とした光が頭の中に広がる。

その眩い光の中。
電気で漲った身体はやがて、
とろり溶けるようにほぐれてゆく。

そして自然の摂理に従うように、
“私自身”はレイの奥へと吸い込まれてゆく。

私たちの意志によるものではなく、
定められた道をゆっくりと。
ゆるやかに滑らかに。
奥へ奥へと吸い込まれてゆく。。


涙の海は人の歴史。
長い長い年月人は海に涙を溶かしながら、
愛育んで新たな生を生みだしてきた。

私はその海に還ってきたのです。
母なる海に還っていったのです。
ここで“私”は生まれたのです。

涙の海の向こうの母なる海。
私が生命を授かった場所。

はるか昔、生を受けたばかりの私は、
こうして母の羊水に守られていた。
レイの“体内”に入った“私”はその記憶を呼び戻した。

優しくて温かくて。
何も心配することなどない母なる海。

なんと心地よいのだろう。。

・・

“私自身”を蜜口に導いたレイの手は、
私の背に戻り、
私たちは互いを抱き合って動きを止める。


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