J (3.秘密の恋愛)
11. 一夜の夢 (10)
なぜなら。 レイはホテルの入る時一瞬、 若干躊躇った様子もあったじゃないか。(参照こちら)
この部屋に入ろうとした時にも、 さも当然のように部屋に入ろうとする私に、 レイは何かを訴えようとしてたじゃないか。(参照こちら)
一個の男と女として互いの魂がひとつ炎と熱く燃えていたとしても、 もはや私たちを遮るものは何もなかったとしても、 それぞれの“個”を統一するそれぞれの自己が“それ”を望まぬのであれば、 ふたつの“個”はひとつになれない。
好きで好きで好きで、好きであっても。 愛して愛して愛して、愛していても。 互いが同じ時に“それ”を望まぬのであれば、 ふたつの“個”はひとつになれない。
無理をして身体を合わせ、 身体と身体をひとつにすることはできよう。 だが、それは所詮、身体的な結合に過ぎない。 魂と魂、心と心、身体と身体がひとつになってこそ初めて、 ふたりひとつに結ばれるのだ。
今、レイは“それ”を望んでいない。 俺がいくら望んでいても。 レイは望んでいない・・。
そう結論付けた私の中に、もう一人の私が現れる。
そうなのか? レイは本当に望んでいないのか? 望んでいながらも、心がブレーキをかけるってことあるんじゃないのか?
レイの“自身”もまた潤んでいた。(参照こちら)
俺たちは確かめ合うことなくても、感じ合い、 男と女の交わりの合図が反応しあっていたのじゃないのか?
身も心も溶けてとろとろと炎、 魂と魂がひとつになるその交わりの準備が、 既に互いの心と体において整ってきていたのじゃないのか?
だからこそ、俺の“自身”は猛ていたのじゃないのか?(参照こちら)
俺がこれほどレイを感じていたというのに、 今、レイは“それ”を望んでいないだと?
レイは本当に望んでいないのか?
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