J (3.秘密の恋愛)
10. 夜の公園で (8)
「でも、ダメだった、、。工藤さんを忘れようとすればするほど、 工藤さんから心を離そうとすればするほど、私は工藤さんに心を傾けた。 工藤さんが私を避けているのにも拘らず、、。」 「ん、、。でも僕は、、実際は避けていたわけじゃなくて、 君への想いを封印していたんだよ。」 「わかってる。、、わかっています、そうだろうと思っていました。 だから、尚のこと私は工藤さんから心を離すべきだったの、、。」 「ん、、。うん、、そっか。」
「工藤さんが結婚されてから、私、何人かの人とお付き合いしたわ。 でも、だめね。心の奥には工藤さんがいると、どうしても。 相手の方が本気になるほど、私の心が嘘をつけなくなってしまって。」 「ん、、う、ん。」
「今の彼はね、ほんとに普通。友だちの彼の友だちなんです。 今のところ、特別なことなど何もないんです。」 「でも、お通夜に来てくれたんでしょ?」(参照こちら) 「そう、だから、私、びっくりしちゃって、、。」
それは、、彼は君が好きなんだよ。 誰が好きでもない女の母のお通夜に、ひとりで行くか。 特別に縁があるのならいざ知らず、。
だが。 それも君の言う通り、今のところ、だ。 その彼とは、これから始まる運命がある。 僕と君との関係にはあり得ないこれから始まる運命がね。。
「そうか、、。その人は、優しい人?」 「優しいというか、、なんでも気を使ってくれる人かな。 いろんなところに連れて行ってくれたり、休みの日も誘ってくれて。」 「ふうん。いい彼じゃないか。」 「そんなふうに言わないで下さい。私、工藤さんにそう言われるの辛いのに。」 「、、、ん、う、ん。ごめん。」
「本当は、工藤さんに誘ってもらいたい。けど、それは望んじゃダメ。 仕事が終わると工藤さんはおうちに帰られるでしょ。 私はひとり、アパートに帰るだけ。」 「・・・。」 「寂しかった、、。」 「ん、、。」
私は何も言えなかった。 ただただ頷くよりなかった。 そんなレイの心中も知らず、私はレイへの想いを自分本位にしか考えず、 自分だけで葛藤を繰り返し封印をし、仕事でそれを忘れようとしていたのだ。
その間、レイはレイでこれほどまでに苦しんでいたのに...。
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