J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2005年02月09日(水)    もしレイがいまだ私に恋心を持っていたとしたら、

J (3.秘密の恋愛)

10. 夜の公園で (6)


(え? 、、私だって、って?)

私も、レイの小さな声に釣られて、小声になって聞き返す。
レイはこくんと首を縦に振る。
私だって、と。

(私だって、ジェラシーを感じているわ。
 いつも、いつも。)
(?、、誰に?)
(それは、。言うと辛いから、言えない。)
(、、あ。、、友美さん?)
(・・・。)

レイは黙り込みました。
私も黙るよりありませんでした。
ついさっきまで仲睦まじく話していたふたりは、
いきなり現実に直面して言葉を失ったのです。

私たちには越えられない一線がある。
あと一歩踏み出せば掴める互いの望みを、
私たちは直前で見ながら立ち止まらなければならない。

そんなことは分かっていたことでした。
だが、いざ目の前にしてみると、とても深い谷のようで、
息を呑んで言葉失い立ち止まらざるを得なかった。
それが現実だったのです。


私がレイの彼氏に妬くジェラシーよりも、
レイが私の妻である友美さんに妬くジェラシーの方が、
よほど深いものだったに違いありません。

何故ならレイは友美さんをよく知っている。
話したこともあれば一緒に過ごしたこともある。
私と友美さんの結婚までの一部始終も知っていて、
結婚式披露宴にも出席してくれた。
我が子ユキの誕生も知っているし、ユキの成長も見て知っている。
毎晩私が帰るのは友美さんとユキの待つ家。
休日に私が過ごすのは友美さんとユキのいる家庭。

もしレイがいまだ私に恋心を持っていたとしたら、
ジェラシーを感じないはずがない。
それも人に言えないとても辛いジェラシー。

だがレイはそんな素振りを私に見せたことがなかった。
一度たりとも。


なのに。。
それなのに私と言えば何だ!
甘えるように理解を求めるように、
僕は君の彼氏にジェラシーを感じているだと!

なんて軽率な奴なんだ、俺ってよ!


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