J (3.秘密の恋愛)
10. 夜の公園で (4)
ふっとそんなことを頭によぎらせながら、私は話を続ける。
「僕が君を避ける、というか、君も、ほら、彼氏がいて、 遠慮するっていうかな、ま、そんな感じだったと思うけど?」 「そうね。よくそう言って私、帰らせて貰ったものね。」 「だろ。原因は僕ばかりじゃない、ってことさ。」
レイは、そうかしら、という顔をしましたが、 私は意に介さず話を続けて。
「まぁ、原因はともかくとして、君の上司としてはだ、 君に仕事ばかりさせてアフターファイブって奴をしてやれなかった、 そういう反省を僕が持っている、ということだよ。」 「うーん、、また、難しっぽく言うんですね。 いつもそれで私、ごまかされちゃうんだなー。」
でもそれが工藤さんらしいからいいですけどね、と、 レイはクスクスと笑いながら話す。 私は私でどこがいいのか分からないけれども、 レイにいいと言われて悪い気はせずに、そうかな、と言って笑う。 傍から見れば楽しそうに会話しているふたりでした。
楽しそう。。 実際に楽しかったのです。 レイと話しているだけで、私は楽しかった。
話の内容がなんであれ、楽しかった。 これまでも、いつも、いつも。 そしてこの時も、。
たとえ今晩がレイとふたりで過ごせる最後の夜であったとしても。 私は、楽しかったのです。。
・・
「この際だから聞いちゃおっかなー。レイちゃんの彼氏のこと。」
再びアルコールが入った私は少しずつ饒舌になってきて、 ぽろっとそんなことを聞いてしまいました。 それはかねてから聞きたくて聞けなかったこと。 諦めをつけるにも聞いておくがいいかなとの思いもありました。
聞けば胸が痛くなるのを承知の上で。。
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