J (3.秘密の恋愛)
10. 夜の公園で (3)
「思えばこうしてレイちゃんとふたりで飲むのって、 えっと、3回目、だね。長くふたりで仕事してきたのに、、。」 「そうですね。」 「もっといろんなとこ、連れて行ってあげたらよかったね。 今振り返ると反省したりするよ。」 「どうしてですか?」 「君には仕事ばっかり押し付けてきたかな、って思ってね。。」
君を3年でものにする。 そう言ってこれまでレイを育ててきた私。 上司としては厳しい方の部類だったと思うのだよ。
「そんなことないですよ。工藤さんのおかげで、こうして。。 私、感謝しています。工藤さんに付いてきてよかったな、って。」 「そう?、、ならよかった。」 「うん、、。でも、、あ、いいや、それは。」
レイは何かを言いかけて止しました。
「何、ちゃんと話してよ、話しかけたのなら。」 「うーん、、、もう少し飲みにとか連れて行ってもらえたらよかったな、 なんては思いますけど。」
と言ってレイは上目遣いに笑いました。 そして言葉を続けて。
「でもね、工藤さんは忙しい人だし、それに結婚なさっているし、 だからそんなこと望んでしょうがないなーなんて思ってましたから。」 「、、、う、うん。」 「それに、どこか私を避けているみたいなとこ、ありませんでした?」 「あ、、う、うん、いや、それは、、。」
レイはくすっと笑いながらいじわるなことを話す。 どうして僕が君を避けていたのかわかっている、のにね。 同じ理由で君も避けていた、のにね。 君も僕も自分の気持ちを封印してこれまできたからじゃないか。 大阪の夜、そんな話したよね。。(参照こちら)
でもまあ今となってはそれも懐かしい想い出だ。 楽しそうに話すレイの気持ちもわからぬわけでもない。
想い出の夜、か。
最初は初めてふたりで飲んだ夜。(参照こちら) 次に大阪での夜。(参照こちら) そして今夜、ここ、夜の公園。
ここで、、 始まることなく終わる、。
僕と君との物語。。
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