J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2005年01月19日(水)    工藤さんは、引き止めてくれないんだ。

J (3.秘密の恋愛)

9. これからのこと (10)


「ん、分かったよ、、。」
私は消沈した気持ちを露にしてそう呟きました。

レイは、、黙ってる。
私も、、黙ってしまった。
ふたりは暫く沈黙のまま物思いに耽る。


そしてグラスのジントニックが空いた頃、
私は口を開きました。

「分かったよ。君は、実家に帰ったらいい。
 お母さんが亡くなって、お父さんもさぞ寂しいことだろう。
 そういう約束があったのなら、尚のこと。
 お父さんの言うことを聞いてあげるのがいいよ。」

レイは些か憮然とした表情で答える。
「でも。私は、。仕事を続けたい。」
「その気持ちも分かるよ。だが、君はお父さんと約束したんだろ。
 3年経ったら帰るって。」
「そうですけどぉ、、。」
「じゃぁ、仕方ないじゃないか。」

「仕方ない?」
「うん。仕方ないだろ。約束は約束だ。」
「ふーん、、。」

ふーん、と言ったままレイは私の顔を見つめてる。
だんだんにレイの表情は寂しげな顔になってゆきました。
今にも泣きそうな。
そして思い詰めて言いました。

「工藤さんは、引き止めてくれないんだ。」
「引き止める?」

「私の気持ちなんて、考えてくれないんだ。」
「君の気持ち?」

「私のことなんて、ちっとも想ってくれてないんだ。」
「そ、そんなこと、、」

ないのに!

「私、馬鹿でした。すみません。変なこと相談しちゃって。
 私は私なりに考えてみます。ありがとうございました。」

レイはぺこりと頭を下げて席を立ちました。
顔は涙顔。


「お、おいおい、待てよ!」

レイは店を出てゆく。
私は追い掛ける。


  < Pre  Index  New >    


INDEX+ +BBS+ +HOME+ 
この物語はフィクションです。

My追加

+他の作品へのリンク+・『方法的懐疑』(雑文) ・『青空へ続く道』(創作詩的文章)