J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (15)
「お父さん、実は会社のほうで急の用ができまして、、。 ご無礼なんですが、お先に失礼させていただきます。」
私は恐縮した面持ちでレイの父にそう告げました。
「急の用、、。」 レイの父は何事かという顔で私を見つめて、 「それは大変ですね、どうぞ、早くにお立ちください。」 と言い、続けて、 「誰かに送らせましょうか?」と聞いてくれました。
「いえいえ、私事ですし、結構です、それには及びません、。 今レイちゃんにタクシーを手配してもらっていますから。」 「そうですか。」
「いろいろとお世話になりました。」私は畏まって礼を言う。 「いや、こちらこそ、この度は大変お世話になりました。」 レイの父は向き直って正座して礼を言う。 そして付け加えて、 「工藤さん、レイのこと、よろしくお願いしますね。」 と頭を下げる。
「はい、お任せください、。では。お父さん、失礼します。」
私もそう言いながら頭を下げてから立ち上がり、 周囲の人に軽く会釈をしその場を離れました。
レイは出入り口のところで待っている。 工藤さん、こっちよ、という顔で。
私はなんとなく視線を感じながら、 レイのところへ向かう。
なんとなく好奇の視線。
・・
誤解、、。 されるよな、これじゃ。
親族が集まったテーブルでレイの隣にずっと座っていた男。 レイの父から、レイのことを任す、と言われる男。
いかに会社の上司とは言え、それを知らぬ人は、、。 さっきのレイのおじさんのように、やっぱり、誤解するよな。(参照こちら)
まてよ、。
もしかして! レイの父も誤解しているんじゃ、、、!
、、、まさかね、。
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