J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年10月31日(日)    会社では問題が発生していました。

J (3.秘密の恋愛)

8. 誤解 (14)


「ところで工藤さん、今日は会社はお休みですか?」

レイは何を思ってかそんなことを言う。
平日だもの、休みのわけないだろうに。
葬式が終わったら午後から会社に行くつもりだったのだよ。
それを、君が、というか、君のお父さんが、
直会に出て欲しいというから、、。
こうして此処にいるんじゃないか。(参照こちら


「休みのわけないじゃんか、。平日だし。」
私は当たり前のことを聞くなよ、という口振りで答えました。

「そうですよねぇ。私、しばらく会社休んじゃってるから、すみません。
 仕事のほうは、大丈夫ですか。そればかりが私、気掛かりで。」
「うん、ちゃんとやっているよ、心配しないでいいよ。」

そうか、やはり君はしっかりしている。
自分の不在によって仕事に支障がきたしていないか、
心配しているんだね。

「今日も、鏑木さんやみんな、頑張ってくれている筈だよ、。」
「あー、そう言えば、皆さんから弔電を戴いて、、。」
「仕事に戻ったらまず、礼を言うんだよ、。」
「はい。」


「そうだ、ちょっと会社に電話しておこう。
 直会に出ていることはみなに連絡していないからね。」

そう言って私は席を立ち、
帳場の脇の公衆電話から会社に電話を掛けました。

「もしもし、工藤です、あ、鏑木さん、ええ、今・・・
 ・・・
 ・・・ええ、分かりました。すぐ戻ります。はい、じゃ。」

会社では問題が発生していました。
レイと私を欠いて八方塞だとのこと。
私は急ぎ戻ることにする。


席に戻り私はレイに言う。
「レイちゃん、実は・・・」
「え、それは、、、。工藤さん、すぐ戻らないと。。」

「うん、そうする、この席を中座して悪いのだが。」
「いえ、そんなこと。」

「じゃ、レイちゃん、タクシー呼んで貰っておいて。
 僕は君のお父さんにひと言挨拶してくるから。」
と私はレイに言って、
再び席を立ちレイの父の席の傍らへゆく。

この席を中座する非礼を詫びる為に。


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