J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (14)
「ところで工藤さん、今日は会社はお休みですか?」
レイは何を思ってかそんなことを言う。 平日だもの、休みのわけないだろうに。 葬式が終わったら午後から会社に行くつもりだったのだよ。 それを、君が、というか、君のお父さんが、 直会に出て欲しいというから、、。 こうして此処にいるんじゃないか。(参照こちら)
「休みのわけないじゃんか、。平日だし。」 私は当たり前のことを聞くなよ、という口振りで答えました。
「そうですよねぇ。私、しばらく会社休んじゃってるから、すみません。 仕事のほうは、大丈夫ですか。そればかりが私、気掛かりで。」 「うん、ちゃんとやっているよ、心配しないでいいよ。」
そうか、やはり君はしっかりしている。 自分の不在によって仕事に支障がきたしていないか、 心配しているんだね。
「今日も、鏑木さんやみんな、頑張ってくれている筈だよ、。」 「あー、そう言えば、皆さんから弔電を戴いて、、。」 「仕事に戻ったらまず、礼を言うんだよ、。」 「はい。」
「そうだ、ちょっと会社に電話しておこう。 直会に出ていることはみなに連絡していないからね。」
そう言って私は席を立ち、 帳場の脇の公衆電話から会社に電話を掛けました。
「もしもし、工藤です、あ、鏑木さん、ええ、今・・・ ・・・ ・・・ええ、分かりました。すぐ戻ります。はい、じゃ。」
会社では問題が発生していました。 レイと私を欠いて八方塞だとのこと。 私は急ぎ戻ることにする。
席に戻り私はレイに言う。 「レイちゃん、実は・・・」 「え、それは、、、。工藤さん、すぐ戻らないと。。」
「うん、そうする、この席を中座して悪いのだが。」 「いえ、そんなこと。」
「じゃ、レイちゃん、タクシー呼んで貰っておいて。 僕は君のお父さんにひと言挨拶してくるから。」 と私はレイに言って、 再び席を立ちレイの父の席の傍らへゆく。
この席を中座する非礼を詫びる為に。
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